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【先割れスプーンの話】

スプーンの「すくう」機能とフォークの「刺す」機能をひとつに合わせた先割れスプーン、学校給食のイメージがあります。昭和から平成初期に小中学生だった世代には、なじみ深い道具です。それよりも若い世代には、コンビニの弁当やパスタについてくるプラスチック製の簡易スプーンというイメージではないでしょうか。中華圏で販売されているカップラーメンには、折り畳み式の先割れスプーンが付いていることもありますね。箸やスプーン、フォークを献立に応じて使い分ける考え方が一般的になったそうで、かつてのように先割れスプーンを一律に使う学校は少なくなりました。

給食用の先割れスプーンは、東京都の指導主事が新潟県燕市のメーカーに依頼し、メロン用スプーンを改良して作られたのがルーツとされ、昭和30年代後半から40年代にかけ、全国の学校に広く普及しました。普及の背景には、スプーンとフォークを別々に用意・洗浄するコストと手間の削減、配膳の手間を減らし、当時の衛生環境下で効率よく食事を提供し、脱脂粉乳やコッペパン、おかずといった西洋風の給食メニューに対応しやすくするためだったと考えられています。

昭和50年代に入ると先割れスプーンは、一転して急速に給食の現場から姿を消していきます。万能すぎるがゆえに「箸を使わなくなる」「正しい箸の持ち方が身につかない」という批判がマスコミや保護者、教育関係者から強く上がるようになりました。先割れスプーンは、汁物をすくうには浅く、食材を刺すにはフォークより扱いにくい面がありました。そのため、食器を持たずに顔を食器へ近づける「犬食い」につながるとして、当時は批判の対象にもなりました。昭和51年から米飯給食が本格的に導入されると、箸を含め、献立に応じて食器具を使い分ける方向へと変わっていきました。

その一方、給食以外の用途でユニークな進化を遂げたのが、イチゴ用スプーンです。スプーンの底に凹凸があり、イチゴをつぶして砂糖や牛乳と混ぜやすく設計されているのが特徴ですが、食べやすいように先端が割れているものも多くあります。また、近いものでは名古屋発祥のラーメンチェーン「スガキヤ」に、陶磁器メーカーのノリタケと共同開発した「ラーメンフォーク」があります。昭和53年に誕生し、スープをすくいながら麺を絡め取れる独特の形状で、割り箸の大量消費による環境問題を背景に生まれました。今もニューヨーク近代美術館のMoMA Design Storeで取り扱われています。現在では、先割れスプーンはアウトドアギアやコンビニのお弁当、介護現場でのユニバーサルデザイン食器として、その利便性が再び見直され活躍しています。

なお、英語圏では、この先割れスプーンは、スプーン(spoon)とフォーク(fork)を合わせた合成語で「スポーク(spork)」と呼ばれます。ファストフード・軍隊・アウトドアという実用的な現場を中心に独自の発展を遂げてきました。アメリカでスポークが広く知られるようになった背景には、ファストフードチェーンでの採用がありました。1970年代には、ケンタッキーフライドチキンやタコベルなどでも使われていました。スポークは軽量で持ち運びやすいことから、軍用食やアウトドア用品でも重宝されてきました。海外のハイキングやバックパッキングの世界では、軽量で荷物を減らせるカトラリーとして広く使われています。

今では、ナイフ+フォークの「ノーク(Knork)」、スプーン+フォーク+ナイフの「スポーフ(Sporf)」、立食パーティーで親しまれてきたオーストラリア発祥の「スプレイド(Splayd)」など、組み合わせ方によってさまざまな形のカトラリーが生まれています。これからの時代、マルチカトラリーは災害時にも役立つ道具なのかもしれません。

ヨシタ手工業デザイン室 レンゲフォーク
https://www.shokunin.com/jp/yoshita/cutlery.html

参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/先割れスプーン
https://ja.wikipedia.org/wiki/スポーフ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ノーク
https://adeac.jp/minato-city-kyouiku/top/spread/sub/01_kodomo/subpage1_1.html
https://dot.asahi.com/articles/-/40100?page=4
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000031803
https://www.momastore.jp/shop/g/g0708444726028/