






【青海島のくじら資料館】
山口県長門市にある青海島(おおみじま)。北長門国定公園に指定されており、日本海の荒波に浸食されてできた断崖絶壁、洞門、石柱、岩礁などが作り出す風景は「海上アルプス」とも呼ばれています。そんな美しい海と雄大な自然に囲まれた青海島・通(かよい)地区は、古くから捕鯨が行われてきた場所です。青海島のある山口県の日本海側は南の海で出産・子育てをするために日本海を南下してくる「下り鯨」の経路にあたり、弱ったり死んだりして海岸に漂着した鯨を捕らえてきました。戦国時代に入ると、銛や手槍を使った「古式捕鯨」が始まります。江戸時代に入ると捕鯨を専門に行う組織「鯨組」が作られ、全盛期を迎え、明治時代後半の近代捕鯨(砲殺捕鯨)が始まるまで、古式捕鯨は長きにわたって続きました。
こうした捕鯨の歴史と人々の暮らしを学ぶことができるのが「長門市くじら資料館」です。捕鯨に使われてきた捕鯨用具や解体・加工に使われる用具、仕事着などや解説を見ながらその様子を知ることができます。「鯨一頭捕れば七浦潤う」といわれたように、肉は食用に、皮下脂肪は鯨油として機械油や農薬に、骨やヒゲは加工して工芸品に使われるなど、余すところなく活用されました。鯨は地域社会に大きな恩恵をもたらし、人々の生活を支えるための重要な資源でした。通地区の鯨との関わりで特徴的なのは、捕らえた鯨を手厚く供養していたという点にあります。捕れた鯨一頭一頭に、戒名をつけ、向岸寺に伝わる「鯨鯢過去帳」に鯨の戒名とともに、捕獲年月、鯨種、捕獲場所、体長などを記録しました。現在でも、過去帳と鯨位牌が安置されている向岸寺では毎年「鯨回向」という供養が地域の人々によって行われています。また、くじら資料館のすぐそばにあるのが「鯨墓」です。通地区で捕られる鯨は妊娠中の場合もあり、解体した際に出た胎児70数体をこの墓に手厚く弔ったそうです。実際に鯨の胎児が埋葬されている墓は全国的にも珍しいことから、国の史跡にも指定されています。鯨墓は海を見下ろす小高い丘の上にあるのですが、これは「胎児たちが生前見ることができなかった海を眺めることができるように」、「のちにこの地を訪れる鯨たちが先祖の墓参りをしやすいように」という思いが込められているそうです。
くじら資料館でさまざまな資料に目を通して、ここに暮らしてきた人々の生活を想像していると、私たちは命をいただくことで、生かされているという現代の生活からは遠くなりつつある事実と、正面からしっかりと向き合うことができました。自然の厳しさと常に隣り合わせでありながらも、その恵みや命に対する感謝とその死を悼む気持ち、自然への畏怖の念を抱き、海とともに生きてきた人々の物語は胸に響くものがありました。
くじら資料館のパンフレットには、「日本一小さな資料館」と書かれていますが、その存在意義はものすごく大きな資料館であると思います。青海島は、美しい海があり、ダイビングやキャンプもでき、夏を思い切り楽しむことのできる島です。今年の夏休みはぜひ、青海島へ、そしてくじら資料館にも足を運んでみてください。
長門市くじら資料館
https://maps.app.goo.gl/5SyJXVXNNVzzsfEw7
ショールームのご案内
https://www.shokunin.com/jp/showroom/
参考資料
https://www.kujira-town.jp/ecology/wonder/20250122/
https://nanavi.jp/sightseeing/kujira/
https://yamaguchi-tourism.jp/spot/detail_17017.html
https://www.city.nagato.yamaguchi.jp/wadairoot/wadai/20170420kayoi.html