









【小樽ビール】
先日訪れた、小樽ビール銭函醸造所。醸造所見学の際、案内してくださったスタッフさんの言葉で、とても印象に残ったものがありました。それは「豊かさとは選べること」というもの。これまで多くのお酒に関する話題を発信してきましたが、昨今「お酒の話題はあまり興味がない」と感じる方も少なくないでしょう。しかし、たとえお酒を一切飲まなくても、豊かな暮らしを考えるうえで、この言葉は非常に大きな意味を持っています。
かつて日本のビール市場には、画一的な味の選択肢しか存在しない時代が長くありました。大手が製造していたビールのほとんどは、すっきりとしたのどごしが特徴の「ピルスナー(淡色ラガー)」。エールビールやヴァイスビア、スタウトといった、世界中に存在する多様なビールの味わいは、当時の一般的な市場にはほとんど流通していませんでした。そんな中、小樽ビールは1995年7月に、創業者である庄司昭夫氏により小樽運河沿いの倉庫群にある「小樽倉庫No.1」で産声をあげます。
小樽ビールの使命は、旧き良きドイツビールの文化を日本へ根付かせること。そこで、本当のドイツビールを作るために、1516年にドイツのバイエルン公ヴィルヘルム4世が公布し、16世紀半ばに酵母が加えられて現在の形となった「ビール純粋令」に基づき、麦芽、ホップ、水、酵母のみを使用した伝統的な醸造方法を採用しました。用いるレシピは、ブラウマイスターのヨハネス・ブラウン氏の家系に200年以上にわたって受け継がれるものなど、ドイツのビール文化そのものを体現しています。
原材料へのこだわりも徹底しており、使用する麦はドイツ南部の農家5軒に栽培方法を指定した完全なオーダーメイドです。現在、ドイツ国内でも農家に直接指示を出す醸造所はわずかしかない中、収穫量が減るリスクを負ってでも農薬や化学肥料を使わない有機栽培を貫くことで、野生に近い環境から力強いコクと風味を引き出しています。日本になかった「選ぶ自由」という文化を創り出すために、徹底して本物の質を追求する。これは極めて先進的で挑戦的な試みでした。
このような「選択肢を提供する」という姿勢は、ビールそのものだけに留まりません。レストランを運営している会社として、常に「普段使いのビールでありたい」との思いから、日常的に手の届きやすい低価格を意識している点も非常に印象的でした。どれほどすばらしい本物であっても、特別な日だけのものであっては、人々の日常に本当の豊かさとして根付かないからです。お酒を飲む人も、そして飲まない人も。私たちが本当に求めている「豊かさ」とは、与えられた何かだけを受け入れることではなく、自分の意思で自分の暮らしに合う「本物」を選び取れること。それが当たり前のように、手に届く場所にあることではないでしょうか。本物を届けるための挑戦の数々を目の当たりにし、私たちもこれからどのような価値をお客様に届けていくべきか、改めて深く考える機会となりました。
小樽ショールームから徒歩5分ほどの場所にある、小樽ビールのビアパブ「小樽倉庫No.1」では、まさに小樽ビールが創り出した「選べる豊かさ」を体験することができます。小樽ビールでは、レギュラービール3種類に加え、季節ごとの限定ビールを醸造しています。7月は旧東ドイツ伝統の黒ビール「シュヴァルツ」。1543年ごろ、ドイツ東部で初めて醸造されたシュヴァルツビールは、その栄養価の高さから、寒さの厳しい冬によく飲まれていました。エスプレッソのようなフレーバーとクリーミーな泡が特徴で、伝統的なものよりもやや軽快な口当たりは、小樽ビールの夏ビールとして多くの人々に愛されています。
その日の気持ちや季節に寄り添う多彩なビールから、今日の一杯を選んで味わう。かつて日本になかった、選ぶ自由と選ぶ豊かさ。それを日常の手が届く価格で届けるための真摯な挑戦の価値を、ぜひ現地で体感してみてはいかがでしょうか。
小樽ショールーム
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小樽ビール
https://otarubeer.com/jp/