









【韓国の地方を巡る】
2025年の日本人の海外旅行先のランキング1位となったのは、最も近い国である韓国のソウルだったそうです。トップ10の中には、釜山のほか、龍仁や春川などの中堅都市も入り、新たな旅行先として注目されているとか。ソウルや釜山といった韓国旅行の定番である大都市は、韓国のトレンドがすべて集まる場所。都会ならではの楽しみや旅行の目的もありますが、次の韓国旅行は都会から離れた地方都市や田舎を訪れてみるのはいかがでしょうか?
韓国への留学中、私が毎週末のように利用したのが高速バスです。韓国の高速バスは鉄道のない地域も含め、国内の隅々まで運行しています。何より学生の貧乏旅行にもありがたい価格帯で、東西南北ありとあらゆる場所を巡り、地域ごとに異なる食文化や風景を体験することができました。その中でも、特に印象的で何度も訪れたことのある場所が慶州(キョンジュ)と安東(アンドン)です。慶州と安東はどちらも、行政区分でいうと韓国東部の慶尚北道に位置する、長い歴史と伝統を誇る街です。
慶州は紀元前57年ごろから、935年まで約1000年続いた古代の王朝・新羅の都です。新羅は百済・高句麗を平定し、朝鮮半島を初めて統一した国。仏教を国教とし、優れた仏教美術が花開きました。仏国寺や石窟庵など、新羅仏教芸術の最高傑作と評される史跡や文化財が残されており、ユネスコ世界文化遺産にも登録されています。「屋根のない博物館」とも呼ばれ、韓国の学生の修学旅行先の定番です。日本でいう奈良・京都のような観光都市。そう例えられるのも納得で、新羅は奈良との関係も非常に深く、東大寺の大仏開眼供養会の際には700人ほどの新羅使節団が奈良へやってきたそうです。現在でも慶州市と奈良市は50年以上の姉妹都市提携を行っています。シルクロードの東端として、ユーラシア大陸の西側からはるばるもたらされたものが数多く出土しており、正倉院に収められているものに似たガラス杯などもその一つです。近所にコンビニがある感じで、古墳や史跡、国宝がある街の慶州。歴史遺産を見に行くというよりは、歴史の中に入り込むという表現がしっくりくる気がします。古墳が集まる地区である緑の美しい大陵苑を歩いていると、古代から吹いてきた風を感じているような不思議な感覚になります。島国である日本の歴史や人々の交流が、朝鮮半島、そして遠くユーラシア大陸の西側にまで確実につながっていることを、慶州に行くと実感します。
安東も慶州と同じく伝統を守り続けてきた場所。ユネスコ世界遺産である安東河回村(アンドンハフェマウル)は、朝鮮王朝時代の官僚である両班が600年にわたり代々暮らした場所であり、今でもその子孫の方々が暮らしています。村の名前の由来にもなっているとおり、村の周囲は洛東江にぐるりと囲まれ、自然豊かなところでもあります。また、安東は韓国の1000ウォン紙幣の肖像画にもなっている李滉の出身地です。李滉は朝鮮時代を代表する儒学者で、1560年に故郷である安東に、今もその姿を残す「陶山書院(トサンソウォン)」を設立、そこで儒教の研究や後進の育成に力を注ぎます。書院とは、両班の子弟たちが科挙試験(官僚試験)の合格を目指し、儒学を学ぶための私設の教育機関です。彼の学説である朱子学は、文禄・慶長の役により日本に渡ることとなった姜沆によって儒学者の藤原惺窩に伝えられます。藤原惺窩によって取り入れられた朱子学はのちに、惺窩の弟子である林羅山らにより江戸幕府公認の学問である官学となりました。ちなみに、5000ウォン紙幣の肖像画である李栗谷と李滉は朝鮮時代の二大儒学者といわれています。安東に行ったら必ず食べたい名物が「アンドンチムタク」という鶏肉と野菜を醤油ベースで煮込んだ料理です。韓国料理の特徴である唐辛子の色をした料理ではありませんが、大量の唐辛子と一緒に煮込まれていますので、油断せずに、辛さの調節をお願いするのがおすすめです。
唐辛子畑に、味噌やコチュジャンなどの伝統調味料を保存する甕「オンギ」が並ぶ風景。山に囲まれ、田畑があり、日本の田舎と似ているようで、よく見ると違いもたくさんある韓国の田舎。伝統的な暮らしを守る人々の穏やかな日常がそこにはあります。なんとなく似ているように見えても、目を凝らすと異なる点や日本との深いつながりを発見できることが、隣国を旅するおもしろさであると思います。田舎でしか見られない風景は、韓国本来の姿を映し出し、「もっと知りたい!」という新たな興味を掻き立ててくれるかもしれません。韓国へ何度も行ったことのある方も、初めて行くという方も、韓国の地方を巡る旅を次の計画に入れてみてはいかがでしょうか?
仏国寺
https://maps.app.goo.gl/CLbPiqwRkHRPEEza8
石窟庵
https://maps.app.goo.gl/G3q9DeuUYemwzMmo7
大陵苑
https://maps.app.goo.gl/azozTxd8S1ECoGU86
安東河回村
https://maps.app.goo.gl/eEFppY5qHbQRuVFJA
陶山書院
https://maps.app.goo.gl/fYQsvSPKJfzFERu28
参考資料
https://www.kankokeizai.com/2512311100kks/
https://www.konest.com/event/gyeongbuk/
https://www.city.nara.lg.jp/uploaded/attachment/112367.pdf
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E6%BB%89