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【小豆のはなし】

春のお彼岸を迎え、先日、北海道・余市町の和菓子店を訪れました。お目当ては、優しい甘さが魅力のおはぎです。まだ肌寒さの残る空気の中、春色の暖簾を目にすると季節が春へ移ろっていることを感じます。

お彼岸にご先祖へお供えするおはぎは、春は牡丹の花に見立てて「ぼたもち」、秋は萩の花に由来する「おはぎ」と呼ばれますが、かつては、春の小豆は皮が固いのでこしあんに、収穫直後の秋にはやわらかい小豆を粒あんにすることが多かったそうです。現在では品種改良や保存技術の進歩により、嬉しいことに、季節を問わずおいしいあんこを楽しめるようになりました。

春には桜餅やうぐいす餅、初夏には柏餅、夏には涼を感じる水羊羹、秋にはお月見団子、そしてお正月には花びら餅。日本には季節や大切な節目と共にある和菓子が数多くあります。その多くに使われるのが小豆で、国内生産量の9割を北海道が占めています。「北海道産小豆」と聞くだけで、味に間違いないと感じる方も多いのではないでしょうか。

そんな小豆の生産が盛んな北海道ですが、不思議なことに、お赤飯には小豆ではなく甘納豆を入れます。スーパーで売られているものも、甘納豆入りの甘いお赤飯が主流です。このご当地文化は、昭和20年代後半ごろ札幌市で生まれました。光塩学園の初代学長・南部明子先生が「子どもが喜ぶ味を手軽に」という思いのもと、炊いたお米に甘納豆を混ぜ、食紅で色付ける簡単な調理法を考案されたそうです。「あずきは無精(ぶしょう)者に煮らせよ」ということわざがあるほど、小豆はじっくりゆっくりと時間をかけて煮る必要があります。そうした手間を省けることや、甘納豆の原料となる豆類の生産が豊富なことも背景にあるのかもしれません。北海道生まれの私は子どものころ、この甘いお赤飯が大好きでしたが、大人になった今、小豆のお赤飯のおいしさをしみじみと感じます。

今回訪れたのは、余市で人気の和菓子店「御菓子処 分福茶釜」。北海道産を中心とした素材にこだわり、一つひとつ丁寧に手作りされた和菓子は、どれも「また食べたい」と思わせてくれる味わいです。おはぎはお彼岸限定ですが、季節ごとの和菓子が並び、人気商品は早い時間に売り切れてしまうことも。私もいつも午前中に足を運んでいます。

余市町は、海と山に囲まれた自然豊かな町です。小樽市からは、海岸沿いの道を車で走ること約30分。心地よい景色を眺めながら訪れることができます。これから北海道は、ゆっくりと春を迎え、やがて桜の季節を迎えます。小樽ショールームから少し足を伸ばして、余市の町で和菓子と春の訪れを楽しんでみてはいかがでしょうか。

小樽ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/otaru.html
御菓子処 分福茶釜
https://www.instagram.com/bunbuku_okashi

参考資料
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sekihan_hokkaido.html
https://iec.co.jp/media/corner/kotowaza/09