






【かんぴょうの話】
お寿司の巻き物の「かんぴょう巻き」、皆さんはお好きでしょうか?私には、少し甘いおやつのような存在で、祖母の好物だったことを思い出す食べ物です。ちょこっとつまめる細巻きには、かっぱ巻きやたくあん巻きもあります。さっぱりと食べられ、口直しにもぴったりで、私はとても好きです。かんぴょう巻きは関東では定番の一本ですが、関西や九州、四国ではあまりなじみがないという話も耳にします。まだ食べたことがないという方には、ぜひ一度味わってみてほしい江戸前寿司の代表格です。
かんぴょう(干瓢)は、太巻きやちらし寿司の具材としてはもちろん、恵方巻きにも欠かせません。恵方巻きのかんぴょうには、細く長いからきている「長寿」の意味が込められています。細くしなやかなのに煮ても切れにくく、食べられる「紐」としても重宝されます。昆布巻きの結束や揚げ巾着、ロールキャベツを縛るのにも使われ、台所の名脇役です。
江戸時代の江戸前寿司の世界では、「海苔巻き」といえばかんぴょう巻きのことを指しました。握りのあと、締めに巻き物を食べるのが粋な江戸っ子の流儀でした。いなり寿司とかんぴょう巻きを組み合わせた「助六寿司」という名には洒落が潜んでいます。歌舞伎『助六由縁江戸桜』の主人公・助六と、恋人の花魁・揚巻の名にかけ、「揚(=油揚げ)」と「巻(=海苔巻き)」を合わせた、江戸らしい言葉遊びから生まれました。歌舞伎の幕間弁当として人気を博したそうです。
かつてのかんぴょうの用途としては、寺院での修行食や公家・武家の精進料理のだしの材料にも使われていました。伝聞で集めた日常料理の材料・調理法を簡潔にまとめたという江戸時代初期の料理書『料理物語』(1643年)には、「干瓢、昆布、干したで、もち米、干かぶら、干大根を取り合わせよし」と記され、かんぴょうから旨味を引き出していたことが分かります。
そんなかんぴょうの原料は「ユウガオ(夕顔)」という植物です。アサガオに似た白い花を夕方に咲かせ、翌朝にはしぼむことから、その名が付きました。『源氏物語』には夕顔の君と呼ばれる女性が登場します。彼女が光源氏に宛てて詠んだ和歌「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花」(あて推量ながら、源氏の君でしょうか。白露が光を添える夕顔のような美しい方は)がこの花に由来しています。
ユウガオは、キュウリやゴーヤと同じウリ科の仲間で、かんぴょうの原料となるのは「丸夕顔」の実で、大玉スイカよりも大きく重い直径30cm前後、重さ10~20kg以上にも成長する巨大な円形の野菜です。この巨大な実をかつら剥きのように薄く、長く削いで干したものがかんぴょうです。古くは中国伝来説や神功皇后の伝承もあり、江戸時代に近江を経て栃木に広まりました。今では国内生産の9割以上を占める栃木県の特産品となっています。
かんぴょうの魅力は、その素朴な味わいと軽やかな歯ごたえ、そして自己主張しすぎない個性にあります。江戸前寿司から家庭の煮物まで、時代を超えて受け継がれてきた名脇役です。
木屋 寿司巻き
https://www.shokunin.com/jp/kiya/sushimaki.html
参考資料
https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-7130 (ColBase 『東海道五拾三次之内・水口 名物干瓢』)
https://ja.wikipedia.org/wiki/干瓢巻き
https://ja.wikipedia.org/wiki/かんぴょう
https://www.kanpyo.jp/basic/
https://ja.wikipedia.org/wiki/料理物語
https://www.kabuki-za.co.jp/syoku/2/no228.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/ユウガオ
https://ja.wikipedia.org/wiki/夕顔_(源氏物語)
https://www.motoji.co.jp/blogs/reading/genji2024_08
https://www.goodcross.com/words/20220-2019
https://urahyoji.com/crops-kanpyo-d/