1

2

【佐賀県武雄の井手ちゃんぽん】

ちゃんぽんと聞くと、代表的なものとして長崎県の名物、中華街の長崎ちゃんぽんを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は、そのお隣の佐賀県にも、土地に根付いた独自のスタイルのちゃんぽんがあります。

佐賀県武雄市で親しまれている「井手ちゃんぽん」は、九州の食文化を語るうえで欠かせない一杯です。福岡県に住む私たちにとっても、「佐賀の武雄といえば井手ちゃんぽん!」とすぐに名前が挙がるほど、多くの人に知られています。地元の人々にとっては日常の味であり、県外から訪れる人にとっては記憶に残る名物となっています。

特徴は海鮮は使わず、どんぶりからこぼれそうなほど山盛りに盛られた野菜。こってりとした豚骨スープでありながら、野菜の甘みと和風だしを感じるやさしくまろやかな味わいです。この味は70年以上変わることなく、初代が長崎で食べたちゃんぽんをもとに進化させて生まれたものだそうです。通常サイズでも野菜は充分にたっぷりですが、店内では次々と「野菜大盛り!」「キクラゲ入り!」と注文が入り、運ばれてくるどんぶりそれぞれには具材がそびえ立っています。かつてこの地にあった炭鉱で働く人たちに、お腹いっぱい食べて栄養をつけてもらいたいという想いが、この豪快な山盛りになり、代々受け継がれています。

カウンター席から厨房を眺めると、立ち上る湯気の中、大きな中華鍋で具材が炒められ、一度に7杯分のちゃんぽんが手際よく作られていきます。順序よく盛り付けられ、こんもりと野菜が積み上がっていく様子は、思わず見入ってしまう圧巻の光景です。

ちゃんぽんの語源には、中国語で簡単な食事を意味する「喰飯(シャンポン)」がなまったという説や、ポルトガル語で「混ぜる」「混合する」という意味の言葉が由来だとする説など、いくつかあります。長崎では、移り住んだ中国人が貧しい中国人留学生に安くて栄養のある食事をしてほしいと考案した料理として広まりましたが、武雄でもまた、炭鉱で働く人々を労いたいという気持ちから、この地に根付き愛されてきました。

素朴で豪快な魅力を持つ井手ちゃんぽん。そのかわいらしい「ちゃんぽん」という響きには、人を思う優しさが詰まっているように感じられます。

井手ちゃんぽん本店
https://ide-chanpon.co.jp/
若松ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/wakamatsu.html