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【バッチャン焼き】

日本では織部焼や美濃焼、有田焼などさまざまな地域に陶磁器がありますが、ベトナムの有名な陶磁器といえば、北部地域で作られている「バッチャン焼き」や南部地域の「ソンべ焼き」があります。

ハノイ近郊の「バッチャン村」で始まったバッチャン焼きは、中国の陶磁器の影響を受けながら発展し、その品質の高さから15世紀ごろには中国・明朝への貢ぎ物となっていました。しかし、明朝の民間貿易制限による中国陶磁器のアジア市場の供給が途絶えたため、バッチャン焼きは東南アジア市場への輸出量の拡大とともに、国内の大衆向け陶磁器から貴族階級向けの高級品まで幅広く生産されるようになります。また、バッチャン村ではもともとレンガづくりで盛んだったため、日用品や装飾品だけでなく建築素材の生産も行われており、今日までその伝統技術が受け継がれています。

バッチャン焼きは、ベトナムの文化を象徴するものとして近年国内外にて注目されています。バッチャン村は2019年にハノイ市公認の観光地として認定を受け、2024年にバッチャン村のお祭りがベトナムの国家無形文化遺産に登録されました。また、2025年には世界工芸評議会(World Crafts Council International)によって世界工芸都市(World Crafts City)に認定されており、国内外ともにベトナムの重要な伝統文化として位置づけられています。

一方、ソンべ焼きは中国から伝わり、フランス統治時代の影響を受けた陶磁器で、庶民の日用品として当時は大量に生産されていたようです。しかし、ベトナム戦争以降、多くの窯元が閉鎖し、生産も減少しました。現在は「幻の陶器」としてヴィンテージ品としても人気で、行政による保護や支援はないものの、ソンべ焼きのブランドや若手作家さんによって生産され、ベトナム南部地域の文化を存続させようといった活動がされています。バッチャン焼きとソンべ焼きはベトナムを代表する焼き物ですが、原料、製作工程、デザインの傾向、歴史的背景や文化としての位置づけにおいての違いがあります。

今回は以前旅行で訪れたバッチャン村での出来事をテーマにしたいと思います。

バッチャン村はベトナムハノイ市街から車で約30分で、観光としても行きやすい場所にあります。バッチャン村に到着すると村の至る所に工房らしき建物や倉庫があり、陶磁器で作られた器や花瓶や壺などが大量に保管されていました。村のほとんどの人が陶磁器づくりに従事しているだけあって、バッチャン村は陶磁器一色といった印象でした。ちなみに村の名前になっている「バッチャン(Bát Tràng)」という言葉は、ベトナム語で「陶器の窯」を意味するそうです。

今回バッチャン村を訪れたのは、ベトナムらしいお土産を買いに行きたいという私を、現地の友人が案内してくれたからです。バッチャン焼きについてはSNSで見かけていた程度でほとんど知らなかったのですが、今回バッチャン村を訪れたことで陶磁器を好きになるきっかけにもなりました。バッチャン村に到着し、バッチャン焼きを売っているお店に器を買いに行った時に、お店に来ていた現地の職人さんがバッチャン焼きの歴史や特徴についてお話をしてくださいました。ホン川によって運ばれる良質な粘土を活用して作られるバッチャン焼きは1000年以上の歴史があること、1300度前後の高温で24時間かけてじっくり焼いているので、とても丈夫で簡単には壊れないよと器と器をカンカンと強くぶつけ合って実践してくださいました。

正直なところ、それまで陶磁器に強い興味を持ったことはありませんでしたが、職人さんのお話を聞いて、安く大量に作られるものでなく、手間暇かけて作られたものは違うんだと強く感じました。職人さんが誇りを持ってバッチャン焼きを作られていると感じられたのも要因だったのかもしれません。私はこの時からバッチャン焼きをはじめ、陶磁器の良さを知るきっかけになり、日本に帰ってきてからもバッチャン焼きを販売しているお店へ行ったり、日本の陶磁器のお店があればふらりとお店に入るようになりました。

私は食後のお茶や休日の休憩時間にお茶やコーヒーを飲むときには、旅先で購入したバッチャン焼きのマグカップを使っています。旅で出会ったものやお気に入りのものを使うとき、その旅のことを思い出したり、おいしいお茶を淹れようといった気持ちになります。日頃使っているものを少し良いものにしてみても、日常の中でいいなと思える瞬間が増える気がします。職人.comでは、日本の職人さんがこだわって作ったものがたくさんあるので、ぜひお気に入りを見つけて使っていただきたいです。また、ショールームでは外国からのお客様も多く、帰国してからも当店で見つけた道具を使うたびに、日本での楽しい時間を思い出せるような瞬間があると嬉しいなと思います。

ショールームのご案内
https://www.shokunin.com/jp/showroom/

参考資料
https://www.viet-jo.com/news/social/250211135226.html
https://g.kyoto-art.ac.jp/reports/6428/
https://nagasaki-u.repo.nii.ac.jp/records/672