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【ごぼうの話】

今が旬のごぼう。食べすぎるとお腹が張ってしまうので、大好きでも控えめにしています。それでも、その背景を知るほどにまた魅力を感じてしまいます。

ごぼうはユーラシア北部原産のキク科の植物で、中国東北部からヨーロッパにかけて広く自生しています。日本には中国を経て、平安時代に薬草として伝わりました。実際、『本草和名』などの古い文献には、ごぼうとされる植物が薬物として記録されています。当初は解毒・解熱・鎮咳などに用いる薬草として扱われていたようですが、食用としても広まり、江戸時代には栽培技術が発達して量産や品種改良が進み、全国へと普及しました。ごぼうは種類が豊富で、地域ごとの特産品としてさまざまな品種があります。たとえば、関東では根が細くて長いのが特徴の滝野川ごぼう、関西では太くて短い京野菜である堀川ごぼうなどが有名です。このほかにも、サラダごぼうや葉ごぼうといった特色のある品種が栽培されています。

ごぼうは独特の土っぽさを含んだ香りと風味、そしてポリポリとした食感が特徴です。根を日常的な食材としてここまで広く食べる文化が発達しているのは日本が中心で、そこから台湾や韓国など東アジアの一部地域にも広がったといわれています。欧米では、木の根っこを食べているように見えると驚かれることもあるようです。

ヨーロッパや北米では、現代のごぼうは野菜というより「デトックス系のハーブ」として認識されることが多く、利尿・発汗・皮膚トラブルを鎮めるといった効能が語られ、ハーブティーやチンキ剤、サプリメントとして利用されています。また、中国の伝統医学では、ごぼうの「根」や「種」が薬用として扱われてきました。特に種(牛蒡子)は、喉の不調や発熱を伴う風邪の初期に用いられる処方に配合され、漢方薬の銀翹散(ぎんぎょうさん)にも含まれています。

日本でよく知られるごぼう料理は、きんぴらごぼう、たたきごぼう、ごぼう天などでしょう。豚汁にはごぼうの香りと歯ざわりが欠かせません。ごぼうの香りや旨味は、皮の部分に多く含まれるポリフェノールの一種・クロロゲン酸によるもの。水にさらしたときに茶褐色になるのも、この成分の働きです。そのため、皮を残すように表面を軽くこそげ落とす程度がおすすめ。皮付きのごぼうは、高田耕造商店の「むすび」で水をつけてやさしくこすると、皮を残したまま泥だけを落とせます。結んだ形状が、細かな土を落とすのにちょうど良いのです。

私の好きなごぼう料理の一つに、お正月の定番でもある松前漬けがあります。スルメと昆布を細切りにし、醤油・みりん・酒・砂糖で漬け込む北海道の郷土料理です。ここに人参・数の子・イクラなどを合わせることが多いのですが、ごぼうを入れる作り方もあります。生のささがきごぼうを入れると、しゃきっとした歯ざわりと土の香りがいいアクセントになります。これは、いつからか母がお正月に作ってくれる一品です。

ごぼうの旬は晩秋から初冬にかけてで、この時期のごぼうは旨味が一段と濃くなります。地中に細く長く根を張ることから、「根気がつく」「家の土台がしっかりする」といった願いを託す縁起ものとして、おせち料理にも欠かせない食材です。この冬もごぼうの力を借りて、元気に過ごしたいですね。

高田耕造商店 しゅろのやさしいたわし むすび
https://www.shokunin.com/jp/kozo/tawashi.html
ヨシタ手工業デザイン室 細千切りピーラー
https://www.shokunin.com/jp/yoshita/peeler.html
鳥部製作所 キッチンスパッター
https://www.shokunin.com/jp/toribe/
白木屋漆器店 手塩皿
https://www.shokunin.com/jp/shirokiya/teshio.html

参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/ゴボウ
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0901_yasai1.html
https://himitsu.wakasa.jp/contents/gobou/
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/gobou.htm
https://dl.ndl.go.jp/pid/1910976 (廣重 筆『大日本物産圖會』 国立国会図書館デジタルコレクション)