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【伊達政宗と仙台味噌 ~武将の知恵と食文化の礎~】

「奥州の独眼竜」としても知られる戦国武将・伊達政宗。戦乱の時代を経て藩政へと転じるにあたり、兵糧確保を重視してきた経験から、食文化や農業の重要性を深く認識していました。仙台藩を開くと、豊かな領国経営の基盤として、農業と産業の振興に力を注ぎました。

戦国時代において、兵糧(戦陣食)は、戦況を左右する重要な存在であり、なかでも「米」と「味噌」の二つは兵士たちにとって欠かすことのできない存在でした。味噌はさまざまな工夫をしながら戦場で携帯されましたが、干すか焼くかして味噌玉にし、ほかの食料と一緒に竹の皮や手拭で包んだものを腰に下げるのが一般的だったようです。また、干した野菜を味噌で塩辛く煮詰め、干し固めたものを携帯して、陣中で煮ればそのまま味噌汁になるという、現代でいうところのインスタント味噌汁のような方法も考案されました。豊臣秀吉の朝鮮出兵に際して伊達政宗が持参した味噌は、他藩の味噌に比べて傷みにくく、その品質の高さが諸大名の間で評判となりました。

仙台藩を開いたあと、政宗は軍用味噌を自給自足する目的で、寛永3年(1626年)、城下に「御塩噌蔵(ごえんそぐら)」と呼ばれる味噌工場を建設します。これは日本初の味噌工場とされており、ここから大々的に仙台味噌の醸造が始まったといわれています。仙台藩の江戸藩邸には、常勤する士卒が3千人いました。彼らの食糧はすべて仙台から運ばれ、味噌は城内の御塩噌蔵から届けられていました。やがて、大井の下屋敷に味噌蔵が建てられ、仙台から送られる大豆と米を使って味噌の仕込みが始まります。江戸の庶民たちは井戸端の噂で「仙台味噌」のおいしさを聞きつけ、つてを頼って手に入れるようになりました。その評判から、下屋敷は“味噌屋敷”と呼ばれるほどに。二代藩主・忠宗の時代には、余った味噌が払い下げられることもあったといいます。

御塩噌蔵の建造後、政宗公は真壁屋古木市兵衛を御用味噌屋に登用することで、仙台味噌の品質向上を図らせました。真壁屋古木市兵衛を筆頭とする味噌醸造業従事者たちは「味噌仲間」という組合を組織し、その規約をまとめた「味噌屋仲間掟留帳」を作成します。この掟留帳には、原料の配合比率、製造方法、価格決定に至るまで、仙台味噌の厳しい基準が定められており、これにより四季を通じて変質しない良質な仙台味噌が誕生、やがて一般庶民から全国へと広まっていったのです。仙台味噌は米麹を用いた米味噌であり、大豆の比率が高く、濃い山吹色で光沢があり、塩の角が取れた旨味と香りが特徴の辛口の赤味噌です。江戸時代を通じて藩によって保護され、この伝統的な製造法と宮城の風土が、大豆の旨味が生きたすっきりとした味わいを醸し出しています。

政宗は兵糧の開発にとどまらず、戦国の世が終わると、美食の追求へと関心を移し、料理研究に没頭しました。『政宗公御名語集』には、彼の食への情熱を示す言葉として、「馳走とは旬の品をさり気なく出し、主人自ら調理してもてなすことである」という料理観が記されています。一方で、健康管理にも余念がなく、起床時間を柔軟に調整して無理な早起きを避け、疲労回復を優先するなど、几帳面さと柔軟さを兼ね備えた武将でした。また、政宗が考案したと伝わる料理も多くあります。たとえば、枝豆をすりつぶして作る独特の菓子「ずんだ」は、陣中で太刀を使って枝豆をすりつぶしたことが起源とされ、「陣太刀(じんだち)」が転じて「ずんだ」になったという説があり、「しそ巻き」も、正宗の時代に温泉地を訪れた湯治客のために作られたのが始まりとされています。

政宗が築いた食文化は、今も仙台に深く根づいています。彼の定めた伝統技術と厳しい品質基準は、現代の仙台味噌づくりにも受け継がれ、配合や製法といった基本は変わらず守られています。仙台味噌は良質なたんぱく質を多く含み、発酵の過程でアミノ酸やビタミンが生成される栄養豊かな食品です。特に赤味噌ならではのメラノイジンを多く含み、高い抗酸化作用を持つことでも知られています。

こうした仙台味噌の伝統は、政宗の軍事的な知恵と産業振興の取り組みから始まり、やがて美食への探究心や健康への意識と結びつき、現代の仙台の食文化を形づくる礎となりました。伊達政宗の残した知恵と精神は、味噌の香りと共に、今も杜の都・仙台に息づいています。

一陽窯 すり鉢 19cm
https://www.shokunin.com/jp/ichiyou/suribachi.html
大久保ハウス木工舎 栗の杓文字
https://www.shokunin.com/jp/okubo/shamoji.html
仙台城跡
https://maps.app.goo.gl/wTDY5fNXucApvH1y5
瑞鳳殿
https://maps.app.goo.gl/5Bq249LuaXogL6Mk6

参考資料
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/sendaimiso.html
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/shiso_maki_miyagi.html
https://www.sentabi.jp/delicious/
http://www.sendaimiso.co.jp/power/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E9%81%94%E6%94%BF%E5%AE%97
http://www.omiso.or.jp/misohistory/misohistory.html