


【豆火鉢で楽しむお香】
長かった夏がようやく終わりを迎え、我が家では「小さな蚊遣り」として活躍してくれた岩本清商店の豆火鉢も、秋から冬にかけては香りを楽しむ「お香立て」へと姿を変えました。季節に合わせて同じ道具の役割を変えてみると、季節の移ろいを楽しむ心や、「しつらえを変える」という暮らしの工夫の中に、日本人が古くから大切にしてきた美意識が息づいていることを実感します。
お香は昔から、空間を整え、客人を迎える際によく用いられてきました。目には見えなくとも、やわらかく空間を包み込む香りは、訪れる人の心をときほぐし、その場の雰囲気を自然に和ませてくれます。旅館のロビーなどで、和の香りがふんわりと漂い、ほっとしたという経験をお持ちの方も多いことでしょう。おもてなしとしてお香を用いる際には、来客の30分ほど前を目安に焚くと、香りの余韻をさりげなく楽しめます。また、スティックタイプのお香は火のついている面積が一定のため香りも均一に広がり、長いものは折って燃焼時間を調整できるのも便利です。
一方で、夜は、自分の時間をくつろいで過ごすためにお香を焚くのもおすすめです。日中は訪れる誰かのために爽やかで明るい香りを選ぶ私も、夜は自分のために、少しまろやかで甘い香りを楽しみます。燃焼時間20分ほどの短いお香を焚き、その間に好きな本を開いたり、照明を落としてゆっくりお茶を飲んだり。お香が消えたあとは、残り香が引いていくのを味わいながら、一日の出来事を静かに振り返るひとときを過ごします。翌朝、昨夜の香りの名残をかすかに感じるのにも、どこかしみじみとした趣があります。
ろくろで挽いた木地に銅製の浅い落としを組み合わせた岩本清商店の豆火鉢は、手のひらに収まるかわいらしいサイズと、ぬくもりのある佇まいが魅力。中に灰を入れれば、お香立てとしてすぐにお使いいただけます。昼はおもてなしに、夜は自分のために。同じ豆火鉢を一日で使い分けるだけで、空間や気分を自然に切り替えることができます。小さな道具のしつらえひとつで、日常にささやかな香りの変化を取り入れ、心地よい時間を楽しんでみてはいかがでしょうか?
岩本清商店 豆火鉢 ※灰は付属しません
https://www.shokunin.com/jp/iwamoto/hibachi.html
小さな蚊遣り(記事)
https://jp.shokunin.com/archives/52026200.html
参考資料
https://www.shoyeido.co.jp/incense/category.html