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【オービュッソンの職人さん】

フランス本土には現在96の県があり、2~7県で一つの地方を構成しています。今回、ヌーヴェル=アキテーヌ地方のクルーズ県にある、「オービュッソン」という小さな村を訪れました。

フランス中央部にあるこちらの町は、人口約3000人で、ボーズ川とクルーズ川が流れる山々に囲まれたコンパクトな町です。絵葉書に出てきそうな石造りの家々が立ち並ぶオービュッソンは、15世紀ごろからタピスリーが織られてきたことで知られており、王立製作所も設立されるなどオービュッソンの重要な産業として成長していきました。この地方で織り上げられた作品にだけに許されるIGP(地理的表示保護)を持ち、2009年には、その伝統的な技術がユネスコの無形文化遺産に登録されたのです。そして今も染色、織物工房、カルトニエ(原画から織機用の型紙を製作する職人)、修復師、タピスリーに関わるいくつもの業種の職人が、その伝統を受け継いでいます。

まず最初に訪れたのは、ヴィルモンテックス城。暖をとるために、ひんやりと殺風景な石壁一面に飾られているタピスリーを見ると、なぜ石造りのお城にタピスリーが必要だったかがよく理解できました。有名な『貴婦人と一角獣』というタピスリーも、この近くのお城から発見されたそうです。町にはいくつものアトリエやギャラリーがあり、実際に織っている姿を目にすると、その細かさと仕事量に驚かされました。織るという作業の前に図案が決まり、幅広い色合いの区分分けをし、その原画に忠実に光や影も表現するため、糸の太さや素材(ウール・絹・麻など)を変えて、光沢感や透明感を表現していきます。時には異なる色糸を組み合わせて画面の柔らかさを表現したりと、教科書どおりには説明できない職人技が求められるのです。

フランスには“サヴォアフェール”という言葉があります。特にハイブランドの伝統的なものづくりにおいて重視される概念のようですが、「savoir(知る)」と「faire(作る)」を掛け合わせてできたこの言葉は、直訳すると「ノウハウ」と記されますが、それだけではとても単純で味気ない気がします。その言葉はもっと深く、長年の歴史で培われた独自の技術や感覚、創造性、日本でいうところの、「匠の技」「職人技」に近いのではないでしょうか。作り方だけではなく「粋なセンス」や「才覚」も必要とされる言葉なのでしょう。

そしてもうひとつ驚いたのは、製作中に織り職人に見えるのは常に作品の裏面、表面の姿は完成するまで見えません!なんと長い月日、期待と不安が入り混じった気持ちで過ごすことでしょう。完成後の機織り機から経糸を切り離すセレモニーがあるそうですが、その時の心境を想像しただけでワクワクしますね。

町の中心部にある国際タピスリーセンターでは、古くから残されている貴重なタピスリーから、現代の作品、そしてどのようにして作品が作られていくのか知ることができます。若い職人を育て、タピスリーを通じ、オービュッソンの知名度向上や、観光客の獲得を目指すためにさまざまなプロジェクトを実施しています。その一つにスタジオジブリとの提携による「オービュッソン、宮﨑駿の空想世界を織る」があって、『千と千尋の神隠し』は愛・地球博20祭に展示されたり、『もののけ姫』は関西·大阪万博のフランス館にそのワンシーンのタピスリーが展示されています。今後もどこかで目にする機会があるかもしれませんので楽しみにしていてください。

いろいろな国の“サヴォアフェール”を知るたびに、いつも当たり前に手にしている自国のすてきな“サヴォアフェール”にも改めて感心する今日この頃。味噌汁をいただいてほっとしながら感じています。

ショールームのご案内
https://www.shokunin.com/jp/showroom/

参考資料
https://www.cite-tapisserie.fr/ja/cite-internationale-de-la-tapisserie-aubusson
https://madamefigaro.jp/lifestyle/230707-tapestry.html
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/aubusson-tapisserie-news-202301