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【皆既月食の話】

先日の9月8日は満月で、日本ではおよそ3年ぶりとなる「皆既月食」が観測されました。9月の満月はアメリカの農事暦では「コーンムーン(トウモロコシの収穫月)」とも呼ばれ、これは北米先住民の伝統に由来し、収穫の季節を告げる意味を持ちます。

今回の月食は未明から始まり、明け方にかけて全国で楽しむことができました。「皆既月食」とは、太陽・地球・月が一直線に並び、満月が地球の影にすっぽり覆われる現象です。月が地球の影を通過すると光が遮られるため、赤銅色に染まります。

古代日本の『日本書紀』では、日食や月食を「蝕む(むしばむ)」と表現し、不吉な現象として記録していました。光が欠ける現象は、災厄の前触れと考えられていたのです。

平安時代から鎌倉時代にかけては、貴族や武士の間でも月食は凶兆とされ、月を見ないようにしたり、密教の修法「一字金輪法」などで災厄を避ける祈祷が行われました。仏教伝来以降は、月食を「月の苦悩」と見なし、煩悩を乗り越える象徴的な出来事と捉える側面もありました。単なる不吉な現象から、修行や悟りを示す精神的象徴へと解釈が広がっていきました。

古代中国では、月食は皇帝の権威や天命の弱まりを示すとされ、儀式や祈祷が行われました。古代メソポタミアでは、人々は月食(および日食)を王への攻撃だと考え、王の身代わりを用意しました。南米インカ文明の神話には、月を襲って食べるジャガーの物語があり、祈りや儀式で月を守る宗教行事となりました。北米のネイティブアメリカンの一部の部族は、赤く染まる月を「ブラッドムーン(血の月)」と呼び、自然の循環や再生のサイクルの象徴として捉え、月食を死と再生、生命のリニューアルを表す神聖な現象としました。

インドのアーユルヴェーダの伝統医学では、月食・日食を見るのは良くないこととされてきました。通常と違う星の位置になることで地球の磁場が乱れ、いつもとは違う引力が働き、それが私たちの体調や心、自然界や動物にも影響を及ぼすと考えたからだそうです。

しかし、皆既月食は、不吉な兆しであると同時に、神秘的・宗教的に重要な出来事でもありました。文化ごとに解釈は異なりますが、共通して、人々の生活や信仰に深く根付いた特別な現象であったことが分かります。

「忌むといひて 影にあたらぬ 今宵しも われて月みる 名や立ちぬらむ」ー西行

忌むべきものと言われてその光が当たるのさえも避けようとする今宵だけど、無理をしてでもそんな月を見てみたいと思う。悪名の噂が立たなければいいのだ。

西行法師は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した僧侶・歌人です。どんな凶兆のいわれがあっても、月を見たいと思うのはいつの時代も変わりませんね。

次回日本で皆既月食が見られるのは2026年3月3日。午後8時ごろに皆既月食になるので、観測しやすそうですね。

FUTAGAMI 栓抜き
https://www.shokunin.com/jp/futagami/sen.html

参考資料
https://weathernews.jp/s/star/lunareclipse/
https://weathernews.jp/s/topics/201801/260095/
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9138/
https://note.com/toshi_mizu249/n/nce3d2d786523
https://note.com/yhr0810/n/nbafbae7bb472
https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/a43638744/mino-20230419/
https://dasaan.xsrv.jp/archives/25673
https://dl.ndl.go.jp/pid/8942999/1/17 (国立国会図書館デジタルコレクション)