









【福岡県の伝統的工芸品 上野焼】
福岡県内において「焼き物の里」と知られる地域には、朝倉郡東峰村の小石原や田川郡福智町の上野があります。小石原で作られる小石原焼は、民藝運動の初期から注目された福岡県を代表する陶器であり、飛び鉋や刷毛目などの模様が魅力で愛用されている方も多いことと思います。上野焼(あがのやき)が作られている上野は、北九州市から最も近い焼き物の里です。侘び茶の精神を受け、格調高い茶陶を献上していた歴史があります。
上野焼は、茶人としても知られる豊前小倉藩初代藩主ならびに初代小倉城城主の細川忠興が、慶長7年(1602年)に李朝陶工の尊楷を招き、陶土と水質に恵まれていた上野で窯を開いて技術を伝えたのが始まりとされています。当時に遡ると、現在の北九州市の約半分の土地は豊前小倉藩です。細川忠興は、千利休の弟子の中でも特に優れた7人の武将を指す「利休七哲」の一人に数えられ、茶の湯に通じていました。細川家統治の31年間にて、国焼茶陶・藩窯としての気品と風格の礎が築かれたようです。
上野焼の特徴は、多彩であること。多種の釉薬が使われることで肌合いや艶もさまざまです。上野焼の代名詞となっている緑青や、3種類の釉薬で彩られる三彩、また、藁灰釉、鉄釉、飴釉、李朝の伝統的技法の粉引、象嵌などバリエーションに富み、自然を感じさせるような流れやにじみが器に独特の雰囲気を生み出します。やわらかな風合い、侘び寂びを感じさせる控えめな美しさがあり、焼成温度が低いため、器自体が極めて軽く、薄づくりなのが特徴です。茶陶として発展した格調は守られながら、日常使いできるものも数多く作られています。
先日、上野焼陶芸館に立ち寄ったところ、どこか見覚えがあることに気付きました。特に上野焼を代表する緑青の湯呑みや花器は、幼いころから家で目にし、日常的に使っていたようでした。実家の食器棚を確認すると、やはり何種類もの上野焼があり驚くとともに、我が家には実家から持ち出した器がいくつかあるため、もしかするとと思い裏を確認したところ、渦模様の印が入っていました。これは左巴(ひだりともえ)と呼ばれ、高台を削る際、ろくろを左回転させながら鉋(かんな)で外から内に細く削ることによりできるもので、上野焼を表す印になっています。何十年も何気なく、ゆかりのある地の焼き物に触れていたことがとても感慨深く、藩窯としての歴史が現代の日常に溶け込み、おのずと親しみ深いものになっていることを知りました。
上野焼は昭和58年、経済産業大臣指定の伝統的工芸品となりました。20軒以上の窯元が伝統を守り続けており、現代的な感性で自由に作陶する陶芸家も現れるなど進化も続いています。
若松ショールームから車で1時間ほどの場所にある上野焼陶芸館では、9つの窯元の作品を一度にご覧いただけますし、福智山の麓から山を登っていく途中にも窯元が点在しているので、直接訪ねて作品を見せてもらうのも楽しみ方のひとつです。周辺には、上野焼の器で提供しているお店も多く、上野の豊かな自然と地元の食事を楽しみながら焼き物に触れることができます。当店では取り扱いはございませんが、若松ショールームから一番近い焼き物の里へ併せてお出かけしてみてはいかがでしょうか。
上野焼陶芸館
https://maps.app.goo.gl/38vVvzLs7JTKsEja9
若松ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/wakamatsu.html
参考資料
https://www.aganoyaki-fukuchi.com/
https://kokuracastle-story.com/2021/12/story53/