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【手になじむ、心に響く、バーナード・リーチ直伝のスリップウェア】

民藝とは「民衆的工藝」の略語であり、柳宗悦氏をはじめとする思想家たちが提唱した、美術品ではなく日常の生活道具にこそ美が宿るという考え方です。英国の陶芸家バーナード・リーチ氏はこの思想に深く共鳴し、日本の民藝運動に多くの影響を与えました。小説家の原田マハ氏の著書『リーチ先生』の主人公としても描かれています。

リーチ氏は日本とイギリスを行き来しながら、実用性と美しさを兼ね備えた器づくりを追求しました。スリップウェアは、その民藝の精神を体現する技法の一つで、化粧土(スリップ)を使って描かれる模様は、職人の手の動きがそのまま器に残る、まさに生きた線。均一ではないからこそ、そこに人の温もりが感じられ、使うたびに心がほぐれていきます。

そのリーチ氏から直接技術を学んだ丹窓窯のスリップウェアは、毎日の暮らしに寄り添う「用の美」そのものです。手に取った瞬間、指先に伝わる土の温もり。釉薬の流れが描く模様は指でなぞるとほんの少し盛り上がっていて、一つとして同じものがなく、まるで自然の風景を切り取ったかのよう。豆皿という小さな世界に、リーチ氏の哲学が凝縮されています。

使い心地は驚くほど軽やかで、和洋問わずどんな料理にも不思議となじみます。漬物や薬味、ちょっとしたお菓子をのせるだけで、食卓がぐっと豊かになります。私自身、初めてこのスリップウェアの豆皿を手にしたのは、小樽ショールームでのこと。棚に並ぶ器の中で、ひときわ目を引いたのが、土の質感と流れるような模様が映えるこの豆皿でした。陶器ならではのざらりとした感触と、釉薬の柔らかな光沢に心を奪われました。

その日、地元のお漬物と山菜を少しずつ盛り付けてみたのですが、驚いたのがその収まりの良さ。器の縁がほんの少し立ち上がっていることで、盛り付けが自然に決まり、料理の魅力が一段と際立ちます。食卓に並べると、家族も「この器、いいね」と声をかけてくれ、器一つで会話が生まれることの嬉しさを感じました。

その後も、朝のヨーグルト用に季節の果物をのせたり、夜はおつまみを楽しんだり。そんな一品一品を丁寧に受け止めてくれる豆皿です。民藝の器は、使うことで完成するといわれています。日々の食卓に、旅先のアウトドアに。どんな場面でも、この豆皿は静かに暮らしに彩りを添えてくれます。

丹窓窯 スリップウェア 豆皿
https://www.shokunin.com/jp/tansou/slipware.html
小樽ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/otaru.html