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【マレーシアご当地コーヒー体験】

旅先での「ご当地グルメ」は、その土地の文化や歴史を味覚を通して感じられるまたとない機会です。コーヒー党の私たちが楽しみにしているのも、やはり旅先での一杯のコーヒー。現地で人気のチェーン店に入って定番商品を頼んだり、雨宿りで偶然飛び込んだカフェでこれまで知らなかった味や香りに出会ったり。ホテルの部屋に備え付けてある、無料のインスタントコーヒーにしても、クラシックなブラックから、コーヒー・クリーム・砂糖が一体になった、いわゆる「3 in 1」タイプまで、さまざまなスタイルを楽しんできました。そんな中、この夏訪れたマレーシアでは、とりわけ印象的な二つのコーヒー体験がありました。

最初は、ペナン島のジョージタウンにて。ホテルから程近いカフェのメニューに、「エッグ・コーヒー」の文字を見つけました。エッグ・コーヒーといえば、熱いコーヒーの上に、卵黄に砂糖やコンデンスミルクを入れて泡立てたカスタードのようなクリームをふんわりのせて飲むベトナム発祥の飲み物。機会があればどこかで飲んでみたいと思っていたので、早速注文しました。間もなくして運ばれてきたカップの中を覗き込むと、なんとコーヒーの上にはそのままの形で浮かぶ卵黄が。そう、これはベトナム式のそれではなく、カフェオリジナルの「エッグ・コーヒー」だったのです。小さなレンゲが添えられているのは、卵黄を崩すためのものでしょうか。試しにそっとすくってみると、思いの外大きい卵黄に驚きました。まずはコーヒーを一口。苦味が少なく、砂糖の甘い味がします。せっかくなら、コーヒーが熱いうちに!と卵黄を崩し、レンゲですくって飲んでみると、玉子の自然な塩味と砂糖入りのコーヒーの甘さが見事に調和した奥深い味。暑さで少し疲れた体も、あっという間に元気を取り戻しそうです。シンプルで大胆、栄養価も高いエッグ・コーヒーとの、忘れられない出会いとなりました。

そして、マレーシアのコーヒーを語る上で外せないのが、「イポーホワイトコーヒー」です。これは、マレーシア第三の都市イポーで誕生し、世界各地に広がったコーヒー飲料の一種で、19世紀に中国海南島から移住した華僑によって作られたとされています。現地ではコーヒー豆を焙煎する際に、砂糖、マーガリン、小麦が加えられていましたが、ホワイトコーヒーでは「少量のマーガリンのみを加えて焙煎する」という独自の方法が取られました。実は、ホワイトコーヒーの「白」という言葉は、豆やコーヒーの色ではなく、中国語の「白」が「何も加えていない」(ここでは焙煎時にわずかなマーガリン以外のものを加えていない、の意)を意味することに由来しています。香り高く、味が濃厚でありながら苦みが少ないのが特徴で、イポーの人々に長年愛されてきました。ちなみに現地の喫茶店では、砂糖の代わりに加糖練乳を加えて淹れるのが一般的だそうです。

そのホワイトコーヒーを飲むべく、ホワイトコーヒー発祥店の一つとされる、1958年創業のコピティアム「南香茶餐室」を訪ねました。マレーシアにおける「コピティアム」とは、マレーシア式中華料理を提供するコーヒーショップの一種。メニューはホワイトコーヒーをはじめとした飲料に、朝食、麺、点心と、バラエティーに富んでいます。地元の人と観光客でにぎわう店内は満席。周りのお客さんも頼んでいた人気のエッグタルトと、看板商品のホワイトコーヒーをホットとアイスで注文。濃厚なエッグクリームが入ったエッグタルトは、生地がパイのようにサクサクで、香ばしさがありながら苦味が控えめなホワイトコーヒーとの相性も抜群でした。暑い気候にぴったりの甘みに、なるほど東南アジアらしい飲み方だと感じました。

ジョージタウンでの、予想を超えたエッグ・コーヒー、そして、イポー発祥の独自製法によるホワイトコーヒー。玉子の使い方や焙煎方法など、どちらのコーヒーもその土地ならではの個性が光っていました。甘いコーヒーは、暑さを和らげる工夫であり、玉子は働く体を支える実用としての知恵だったのかもしれません。また、移民が伝えた焙煎方法と、イポーを囲む石灰岩の山々でろ過された質の良い水により、この地でしか味わえないホワイトコーヒーが生まれたと考えると、味の背景にある歴史と環境の結びつきが見えてきます。

一杯のコーヒーには、地域の歴史と気候、人と文化の往来が溶け込んでいます。一口飲めば、そこに生きる人々の暮らしや生活のリズムに、旅行者の自分も一時的に歩調を合わせることができます。コーヒーは嗜好品という枠を超えて、異なる世界を理解しようとする私たちに与えられた、最も身近で奥深い文化体験のひとつであるのかもしれません。

セラミック・ジャパン モデラート
https://www.shokunin.com/jp/ceramicjapan/moderato.html
セラミック・ジャパン デュエット
https://www.shokunin.com/jp/ceramicjapan/duetto.html
Toh Soon Cafe 多春茶室 by Coffee Cave
https://maps.app.goo.gl/w7v3hAUdQSfXpRsQ7
南香
https://maps.app.goo.gl/QniamaxrvZqFmpLq8

参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%A0
https://travel.asean.or.jp/malaysia/2912/