

【ナンバ歩き・ナンバ走り】
年々、夏の暑さが厳しく感じられます。江戸時代は小氷期で、現在より涼しかったとされていますが、着物や草履・下駄での生活はどういうものだったのでしょうか。
江戸時代の人々はよく歩いていたといわれています。飛脚や旅人、大名行列に仕える人々の歩き方については、「ナンバ歩き」や「ナンバ走り」と呼ばれる動作が知られています。浮世絵などにその姿が描かれており、本当の歩き方そのものを映したかどうかははっきりしていませんが、想像を膨らませる手がかりになっています。
この動きは歌舞伎の「六方(ろっぽう)」と呼ばれる所作や、古武術の足運びにも共通点があります。また、現代の剣道にもその要素が見られ、すり足による前進や体をねじらない構え方は、ナンバ歩きと共通しています。
ナンバ歩きの特徴は、左右の手足を同時に出すこと、上体をねじらないこと、そして腕を大きく振らないことにあります。前傾姿勢でつま先から静かに接地し、かかとを強くつけない小股の歩き方で、着物や草履、刀といった生活の条件に合っていたのではないか、とも考えられています。体をねじらず腕を振らないため、余分なエネルギーを使わず疲れにくい歩き方と言えます。
今の郵便や電話の役目をしていた飛脚は、一日に100kmほどの距離を移動したとも伝えられています。100kmは東京から小田原を往復する距離に相当し、フルマラソン2回以上にもあたります。徒歩でこれをこなした体力には、ただただ驚かされます。
もっとも、さすがに一人の人だけでそんな長距離を早く走り続けることはできません。江戸幕府は街道沿いの各宿場に飛脚を配置し、手紙や荷物をバトンのようにリレーして目的地に届けました。ちなみに、この飛脚の仕事をスポーツ化したものが「駅伝」です。
現代の調査によると、ナンバ歩きをすると従来の歩き方に比べて消費エネルギーが約12%少なくなり、体への負担も軽減されることが分かっています。また、底の薄い草鞋(わらじ)を履くことで自然に足裏全体で着地でき、足への衝撃が抑えられました。旅の途中でも、適度な休憩や塩むすび、梅干し、宿場での麦ご飯や味噌汁などでエネルギーとミネラルを効率よく補給していたと伝えられています。
明治に入ってからは、西洋式の軍隊訓練や体操の普及によって「腕を振り、手足を交互に出す歩き方」が強調されるようになりました。しかし、歌舞伎や伝統武術、盆踊りなどには今もその要素を見ることができます。近年では陸上短距離の末續慎吾選手が、ナンバ走りを参考にした走法で世界大会のメダルを獲得したことも注目を集めました。
ナンバ歩きは、腰と肩を正面に保ち、体をねじらないため、負担の少ない歩き方と考えられています。坂道や階段を上がる場面では、脚と同じ側の上半身を使うと楽に動けるという報告もあります。暑さで体力が落ちやすい季節ですが、無理のない範囲でこうした歩き方を試してみるのも一案かもしれません。
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参考資料
https://president.jp/articles/-/25020
https://ja.wikipedia.org/wiki/ナンバ_(歩行法)
https://www.nara-k.ac.jp/nnct-library/publication/pdf/h22kiyo10.pdf
https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=1709
https://ja.wikipedia.org/wiki/飛脚
https://edohashiri.com/namba.html
https://enmokudb.kabuki.ne.jp/phraseology/3338/
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/modules/kabuki_dic/entry.php?entryid=1302
https://www.ntv.co.jp/megaten/oa/20170723.html
https://note.com/edoninjarun/n/n79aabb0bda96
https://www.kusanosk.co.jp/trivia/column/road/7254