









【三嶋亭】
京都に住んで約3年、寺町京極商店街にある言わずと知れたすき焼きの老舗「三嶋亭」へ、先日初めて行ってきました。
三嶋亭は、初代・三嶋兼吉が妻と共に長崎で牛鍋を学び、1873年(明治6年)に京都・寺町三条で創業しました。寺町通と三条通の交わる角に佇む三嶋亭は、京町家造りの店構えで、軒先のショーケースには牛肉が並んでいます。いざ店内へ足を踏み入れると、正面に階段があり、玄関で靴を脱いで2階へ。店内の欄干、天井、格子などは明治の創業当時のままで、「中はこうなっているのね」と数寄屋造りの建築をまじまじと見ながら歩き、個室に入ります。電話予約をした際に空きがあったため、個室にしていただいたのです。畳の空間の中心に八角系の赤いテーブルがあり、障子を開け外を見下ろすと寺町京極商店街を行く人々が見えました。店内は複雑な造りで位置関係が分かっていなかったこともあり、窓の外が知っている風景で不思議な感覚がしました。
お昼のコースはすき焼き、オイル焼き、水炊きから選ぶことができますが、やはり迷わずすき焼きに。小鉢、牛肉、野菜、玉子、ご飯、しぐれ煮、香の物、果物が含まれるコースです。程なくして運ばれてきた牛肉と、まるで和製ジェノベーゼの独活(うど)とタケノコの木の芽和え。ちょうど訪れたのが独活もタケノコも木の芽も旬の時期で、食感も楽しく、すき焼きと同じくらい食べられてうれしかった一品。霜の入った迫力のある牛肉の登場には小さく歓声が上がり、ビールを飲みながら、木の芽和えをいただきつつ、すき焼きが仲居さんの手によって目の前で作り上げられていくのを見守っていると、香ばしくいい香りが漂ってきます。
三嶋亭のすき焼きは、関東風とも関西風ともまた違う、三嶋亭オリジナルなのだとか。温まった鍋にまんべんなく敷いた砂糖が溶け、全国から三嶋亭独自の目利きで厳選された黒毛和牛と伝統を守りながらも5代目がさらに進化させた割下を入れて両面を焼いたら、生卵をつけていただきます。砂糖と牛肉、秘伝の割下が一体となり、ベストな状態で完成したすき焼きを贅沢に口にほおばる、至福の時。やることは、食べて飲む、それだけです。牛肉の上に結われた三つ葉が品よくちょこんとのった光景を見て、その丁寧な仕事に、京都を感じました。
箸置きは、三嶋亭のシンボルでもある行燈。細部にさりげなく、文明開花の時代の華やかな空気感が息づいています。窓を開け、通り抜ける風を感じながらおいしいすき焼きを食べ、デザートにはさっぱりとメロン。あれから三嶋亭の前を通るたびに、5月のある晴れた日にあの個室でみんなですき焼きを食べたな、と上を見上げます。
三条ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/sanjo.html
三嶋亭
https://maps.app.goo.gl/wdKSr487NfQQPjZH9
参考資料
https://www.mishima-tei.co.jp/aboutus/