



【大原の「飛び出し坊や」】
歴史ある美しい山里として知られる大原。土地の空気がどこか優しく、訪れるたびに陽だまりに包まれたような気持ちになる、大好きな場所です。そんな大原について、語るべきことは数あれど、本日のテーマは「飛び出し坊や」です。
大原を散策していると至る所で出合う、子どもの形をした看板、通称「飛び出し坊や」。交差点など危険な場所でドライバーに注意喚起を行うためのものです。最近は全国で見かけるようになってきたのでご存じの方も多いかと思うのですが、大原ではまず、その数の多さに驚きます。大きな交差点はもちろん、細い道の横や、ガードレールの途切れ目など、ちょっとでも交通の危険がありそうな場所には、必ずといっていいほど飛び出し坊やがいます。また、大原の飛び出し坊やは、表情のユニークさも特徴です。飛び出し坊やといえば大きな丸い目の男の子が一般的ですが、私が知る限り大原には一人として同じ顔の坊やはいません。それぞれが実に個性的で、思わず二度見してしまうこともしばしば。坊やといいつつも、男の子もいれば女の子も、なかには年齢不詳の方(?)もいます。こんなにもたくさんの飛び出し坊やを、いったい誰が作っているのか気になってしまうのです。
ところで、そもそも「飛び出し坊や」とは何か。調べてみると、誕生したのは今から50年以上前の、1973年のこと。当時、急速な車社会の到来により、子どもの交通事故が多発するようになりました。そのことに心を痛めた滋賀県八日市市社会福祉協議会(現・東近江市社会福祉協議会)が、なんとかできないかと地元の「久田工芸」に注意喚起の看板を依頼。依頼を受けた久田泰平さんは、いろんな看板を見て回った末、「ドライバーに近くに子どもがいることが一目で伝わるように」と、従来の文字の書かれた四角い看板ではなく、子どもの形に切り抜かれたオリジナルの看板を考案されたそうです。その後いくつかの変遷を経て、飛び出し坊やは現在の姿に。ちなみに、正式には「とびだしとび太」くんという名前がありますが、イラストレーターのみうらじゅんさんがたまたまドライブ中にとび太くんを見かけて「飛び出し坊や」と呼ぶようになったことから、こちらの名前が世間に広く知られるようになったのだとか。いずれにしても、そのポップでかわいらしい姿は認知されるにつれて人気を呼び、今ではグッズも販売されるほど。生みの親である久田さんは、現在も一枚一枚手描きで制作を続けていらっしゃるそうで、各地に設置された後も地元のPTAの方たちが定期的に補修を行うなど、たくさんの人に愛されている坊やなのです。
さて、大原の飛び出し坊やについて調べてみると、どうやら「大原おやじの会」の皆さんが何日もかけて顔を描き、設置されているらしいということが分かりました。地域の子どもたちの安全を願いながら、みんなでワイワイおしゃべりをしたり、お互いの作品に笑い合ったりしながら作業をされている様子を想像すると、なんだか心が温かくなります。
子どもたちが安心して過ごせる町にしたい、そんなたくさんの人たちの願いとともに、今日も坊やは頑張っています。町の飛び出し坊やを、ぜひ探してみてください。
三条ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/sanjo.html
今出川ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/imadegawa.html
参考資料
https://tobidashibouya.com/#articles