










【四条大宮】
京都にはかつて、「京都の新宿」と呼ばれていた地があります。その地は、「四条大宮」。戦後の四条大宮は、特急も止まる阪急電鉄京都行きの終点であり、駅の名称はなんと「京都駅」でした。
明治中期までは、田畑の広がる農村地帯だった四条大宮ですが、まず1910年(明治43年)に嵐電が通り、その後市電がやってきて、1931年(昭和6年)に京阪京都駅が誕生。これが大きな契機となり、1963年(昭和38年)に旧・京阪新京阪線(現・阪急京都線)が河原町駅まで延伸し、京都駅が「大宮駅」に変わるまでの30年以上にわたって、「東の三条京阪、西の四条大宮」として京都の二大ターミナルの機能を果たしました。阪急、嵐電、市電、バスなどの交通の要衝となった結果、周辺には映画館や多くの酒場が集まり、相当なにぎわいがあったといいます。
そんなわけで、なかなか京都の観光の目的地とはならない四条大宮ですが、現在は嵐電と阪急の駅が四条大宮交差点を挟んで向かい合い、周辺には飲食店をはじめとした新旧名店がひしめき合っているのです。京都では「会館飲み」という文化があり、酒場が一軒の建物に集まる「会館」が各地にあります。四条大宮にある会館は、その名も「新宿会館」。名残を感じますね。会館は上級者向けのイメージがありまだ足を踏み入れられていませんが、四条大宮の名店をいくつかご紹介。
まず、四条大宮に行ったら必ずや訪れてほしい一軒が、大宮駅のすぐ隣にある居酒屋「ふる里」。エレベーターを降りるとそこには、雑居ビルの中とは思えない良い雰囲気のカウンター席と畳の小上がりが。名物はなんといっても果物をまるごと味わえる生搾りのフルーツサワーですが、ホワイトボードにぎっしりと書かれたその日のメニューは、何を頼んでも間違いありません。先日訪れた冬のふる里では、気の利いたお通しに、新鮮なカンパチの刺身、かぶら蒸し、里芋の唐揚げ、酒粕と味噌と鶏ガラだしに焼き餅ののった「ふる里鍋」など、どれも染み入るおいしさ。居酒屋を飛び越えて、割烹のような。でも、肩肘張らずにくつろげるあの空気感。隠れ家的存在ですが常連さんでにぎわっているため、訪れる際はご予約を忘れずに。
次に、大宮駅前にある「フルーツパーラー ヤオイソ」。創業1869年(明治2年)の歴史を持つ果物専門店で、数軒隣にあるフルーツパーラーの季節のフルーツサンドやミックスジュースも大人気。こちらをお目当てに四条大宮を訪れる方も多いのではないでしょうか。
最後におすすめしたい一軒が、路地裏にひっそりと佇む「イノウエ」。築90年以上の京町家で姉妹で営まれている小料理店。夏に訪れた際、とうもろこしのかきあげやモロヘイヤとあげのおひたしなどの季節のメニューや、名物のシュウマイやだし巻きなど、どれもほっこりとしみじみと、ああおいし…。いい夜を過ごせました。
このような、知られざる歴史のある四条大宮。少し歩くだけで気になる飲食店がひしめいていて、まだまだ奥深い四条大宮という街の魅力の片鱗にも触れられていない気がしています。
ふる里
https://maps.app.goo.gl/nwKQsMZ7QvnuDbB78
フルーツパーラー ヤオイソ
https://maps.app.goo.gl/2dEapDr12PdyAYJV6
イノウエ
https://maps.app.goo.gl/tDrtGdGNpk5KaeVG9
参考資料
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/thekyoto/676377
https://www.4jo.or.jp/blog/704.html
https://kyotolove.kyoto/I0000372/
https://brutus.jp/kyoto_kaikannomi/
https://www.leafkyoto.net/store/230112-kyoto-inoue/