


【節分にとろろ汁】
「節分」とは「季節を分ける」という意味で、季節の変わり目を指します。本来、立春・立夏・立秋・立冬の前日をすべて「節分」と呼びますが、旧暦では立春が一年の始まりとして重んじられていたため、一般的に「節分」といえば春の節分を指すようになりました。2025年の立春は2月3日であるため、今年の節分は2月2日です。
古代中国には「追儺(ついな)」という邪気や疫病を追い払う風習があり、宮中で行われていました。この文化は飛鳥時代に日本に伝わり、平安時代には宮中で「追儺式」という儀式として行われるようになりました。さらに、室町時代中期ごろから「鬼は外、福は内」という掛け声が加わり、江戸時代には家庭内での豆まきとして一般化しました。豆をまく理由は、「豆」が「魔を滅する」という語呂合わせに由来します。また、日本には穀物をまいてお祓いや清めを行う「散供(さんぐ)」という風習があり、豆まきもその一環と考えられます。
長野県には、節分に「とろろ汁」を麦飯にかけて食べる風習がありますが、その由来にはいくつかの説が伝わっています。たとえば、長芋を鬼の金棒に見立てて食べることで鬼を祓うという説、長芋を擦る姿が鬼の角を削るように見えたという説、また、長芋が滑りやすいことから鬼が家に入れなくなるという説などです。
長野市立長野図書館の蔵書『信州の年中行事』には、次のような記述があります。「県下全般に夕食は麦飯にトロロ汁をかけて食べるところが多い。そして、『トリガチ』といって早く食べるほどよいとされている。(中略)トロロ汁を食べるのは、寒明けになるので胃袋を試すために大食するのが目的だといわれている」。北信地方が長芋の生産地であることも、この食文化の成立に影響しているのかもしれません。昔から大食いの文化があったのは興味深いですね。節分にとろろ汁を楽しむのも、縁起担ぎとしてもよさそうです。
一陽窯 すり鉢
https://www.shokunin.com/jp/ichiyou/suribachi.html
参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/節分
https://ja.wikipedia.org/wiki/とろろ
https://ja.wikipedia.org/wiki/追儺
https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/lifestyle/detail/001171.html
https://www.athome.co.jp/vox/town/95291/