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【鷽替え神事とお鷹ぽっぽの話】

銀座ショールームに展示している山の形の「お鷹ぽっぽ」は、その特徴的なフォルムから、木彫りの「木うそ」と間違えられることが少なくありません。

「木うそ」は、菅原道真をご祭神とする天満宮で行われる「鷽替え神事」で使用されるものです。鷽(ウソ)が嘘(うそ)に通じることから、「これまでの悪しきを嘘とし、全てを吉に取り替える」という意味が込められています。この神事は、木製の木うそを交換する伝統行事として長く受け継がれてきました。福岡は太宰府天満宮の伝承によれば、道真公が蜂に襲われた際、大群の鷽が助けに来たことから、鷽は天神信仰において幸運を招く鳥として大切にされています。

鷽とはスズメ目アトリ科ウソ属の鳥で、日本では冬鳥や漂鳥として広く見られます。名前の由来は「嘘」ではなく、口笛を意味する古語「うそ」からきており、その鳴き声が口笛のように聞こえることから名付けられました。

鷽替え神事は986年(寛和元年)に始まったとされ、現在も太宰府天満宮をはじめ全国各地の天満宮で実施されています。写真は、江戸三大天神の一つ、平河天満宮の木うそです。神社ごとに形やデザインが異なるので、かわいらしく集めたくなる魅力があります。

一方、「お鷹ぽっぽ」は山形県米沢市笹野地区で作られている伝統工芸品「笹野一刀彫」による民芸玩具です。その歴史は、江戸時代に米沢藩九代藩主・上杉鷹山が農民の冬季副業として奨励したことに始まるとされています。「ぽっぽ」はアイヌ語で「玩具」を意味し、アイヌの祭具「イナウ」の製作技術が取り入れられています。イナウは木の表面を細かく削り、房状にした木幣で、笹野一刀彫の削り方に通じるものがあります。

材料は地元で採れるコシアブラの木で、加工のしやすさと弾力性を活かし、中華包丁に似た「サルキリ」という刃物一本で作られます。この技法により、お鷹ぽっぽ特有の美しい羽の表現が生まれます。また、「お鷹ぽっぽ」はその名に「鷹」が含まれることから、上杉鷹山公に好まれ、魔除けとして飾ることが奨励されました。さらに、「禄高(武士の給料)を増す」縁起物としても親しまれ、出世や商売繁盛の象徴として愛されています。

「木うそ」も「お鷹ぽっぽ」も、それぞれの地域で育まれた信仰や文化、自然への敬意が形となり受け継がれてきたものです。その想いを手仕事に込める日本の伝統工芸の奥深さを感じます。

山の形 白木のお鷹ぽっぽ
https://www.shokunin.com/jp/yamanokatachi/otaka.html

参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウソ
https://ja.wikipedia.org/wiki/鷽替え
https://ja.wikipedia.org/wiki/笹野一刀彫
https://ja.wikipedia.org/wiki/イナウ
https://ko-sho.org/download/k_042/SFNRJ_K_042_15.pdf
https://onsenmeeting.com/archives/6552
https://global.canon/ja/environment/bird-branch/photo-gallery/uso/
https://www.chibajinja.com/shinji/usokae/index.html
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/tokyo-usokaeshinnji