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【柿渋の一閑張】

知人へのプレゼントを入れるためのすてきな箱を探していたのですが、なかなかピンとくるものに出会えず。どうしたものかと考えていた時にふと、春に出来心で買った柿渋をまだ使わずにいたことを思い出しました。そうだ、あれを使ってみよう!というわけで、一閑張(いっかんばり)の箱作りに挑戦です。

一閑張とは、竹で編んだカゴや薄い木地などに和紙や布を貼り、その上から漆や柿渋を塗って仕上げる技法で、軽くて撥水性にも優れ、丈夫なのが特徴です。もともとは道具が壊れたり傷んだりしたときに紙を貼った上から柿渋や漆を塗って補強するための庶民の知恵であったと思われますが、江戸時代に中国より亡命してきた飛来一閑(ひきいっかん)という人物が、紙と漆を用いて茶人・千宗旦(せんのそうたん)好みの茶道具を誕生させたことから、こうした技法全般が一閑張と呼ばれるようになったといわれます。ただし、名称の由来については諸説あるようです。

今回は家に手頃な厚紙の箱があったため、こちらを芯に使うことにしました。表面のラベルなどを剥がし、水で溶いた澱粉のりと刷毛で、紙をまんべんなく貼っていきます。多少のシワやムラも味になってくれるので、あまり神経質にならなくてもよいところが一閑張の魅力でもありますが、糊がちゃんと付いていなかったり、空気が入ってしまうとあとから紙がぶかぶか浮いてくるので、貼り付け作業はちょっと丁寧に。すべて覆うことができたら、いったん乾燥させ、しっかり乾いたら本貼りです。表に見せたい和紙や布を貼り、もう一度よく乾燥させてから、柿渋を塗ります。塗りは一回でも大丈夫ですが、柿渋を重ねるほどに、色は濃く、強度も増していくので、好みや用途に合わせて塗りと乾燥を繰り返します。ただし、柿渋は時間が経つと徐々に濃くなるため、イメージより薄めの色でやめておくのが良いとのこと。今回は3回ほど塗りました。

ところで、柿渋には一つだけ難点があり、それは匂い。銀杏をややマイルドにしたような独特の発酵臭があります。乾くと徐々に薄れていきますし、自然の匂いなので私はあまり気にならなかったのですが、家族からはやはりクレームが…。もしやってみられる場合は、換気をしたり、屋外などで作業をするのがいいかもしれません。最近は匂いを除去した無臭タイプの柿渋もあるようです。

完成した箱は、よい具合にムラが出て、渋味のある仕上がりになりました。ペーパーラッピングはせず、そのまま麻紐をかけ季節のお花を添えて。箱も渡すときのちょっとした話題になり、クラフト好きな知人にも喜んでもらえました。

昨年は栗川商店の渋うちわをはじめ、柿渋の魅力にたくさん出会った一年でした。柿渋の一閑張は意外と簡単にできるので、ご興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

栗川商店 渋うちわ
https://www.shokunin.com/jp/kurikawa/

参考資料
https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/15_vol_159/manufacture/