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【東屋のジューサーと天草陶石】

お客様からお褒めいただけることの多い東屋のジューサーですが、私は心の中で密かに「小樽ショールームきっての美人さん」と呼んでいます。まるで飾りつけのホイップクリームのような山のふくらみは、最後の一滴まで絞り切れるように計算し尽くされた高さと形です。山の凹凸に沿うようにぐるっと一周巡らされた穴は、レモンの種をちょうどキャッチしてくれます。ぷっくりと丸みのある下部のポットは十分な容量があるので、そのままドレッシングを作ったり湯冷ましとしても利用できます。横から見ると小鳥のようにも見える注ぎ口には、調合に使った匙が引っかかってちょうどいい。どこを切り取っても美しく、その美しさが使いやすさに結びついていることが、このジューサーが皆様から愛される所以なのだと思います。そして美人さんを際立たせるもう一つの魅力は、やはり、つやっとして透き通るような白い肌です。この美肌の秘訣は「天草陶石」と呼ばれる素材にありました。

天草陶石は、熊本県天草諸島の下島西部にて産出する陶石です。細かく砕いて水を加えると、可塑性に富み、ほかに粘土などを加えずとも単体で磁器を作ることができます。天草陶石は鉄分やチタンの含有量が少ないのが特徴で、焼き上がった磁器は、ほかの陶石を使用したものと比べても、白さに濁りがなく透明感にあふれた肌に仕上がるといわれています。また天草陶石は埋蔵量が豊富であるとされており、現在は日本国内で産出される陶石の約8割を占め、有田焼や波佐見焼をはじめ全国の焼き物に広く用いられています。さらに最近では電気絶縁性に優れることから、電柱や鉄塔に絶縁体として装着される高圧碍子の原料としても利用されており、日本の電力普及にも一役買っているのだそうです。

天草陶石の発見については諸説あるようなのですが、天草で陶石産業が盛んになったのは17世紀ごろ、朝鮮の陶工・李参平が佐賀有田の泉山で陶石を発見し、日本で磁器製造が始まったのと同じくらいとされています。そのころ有田などを治めていた鍋島藩では、磁器産業が藩の支柱となる基幹産業であったため、泉山陶石も厳しく管理され、藩外の者が入手するのは困難な状況でした。そこで注目されたのが天草陶石だったのです。品質が良く安定して入手することのできる天草陶石は評判となり、江戸時代きっての奇才といわれる平賀源内は、1771年に記した『陶器工夫書』の中で「天下無双の上品に御座候」とこれを絶賛しました。

そして、一大採石地として各地に原料を供給する一方で、天草の地においても脈々と焼き物作りが行われてきました。しかしこれだけの豊かな原料を有しながらも、「〇〇焼」というようなブランドの焼き物が生じなかった点は興味深いです。それには、江戸時代の天草が天領と呼ばれる江戸幕府の直轄地であったことが深く関わっているそうです。天領であった天草においては、たとえば鍋島藩にみられたような藩による産業の奨励や管理が行われなかったため、こと焼き物づくりにおいても統一的なスタイルが確立することはありませんでした。その結果、それぞれの窯元が独自の作風を発展させ、個性豊かな焼き物文化が育まれたのです。現在も天草には数多くの窯元が存在し、「それぞれの個性を生かす」という伝統を守りながら作陶が行われています。

さて、当店で取り扱っている商品の中には、先ほどご紹介したジューサーのほかにも天草陶石を使用して作られているものが多くあります。つやっとしたきれいな白い肌をした器を見つけた際には、天草陶石のことをちょこっと思い出していただければ幸いです。

東屋 ジューサー
https://www.shokunin.com/jp/azmaya/juicer.html
天草陶石が使われている商品の一覧
https://www.shokunin.com/jp/etc/google.html?q=%E5%A4%A9%E8%8D%89%E9%99%B6%E7%9F%B3
小樽ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/otaru.html

参考資料
https://amakusatoujiki.com
https://ja.wikipedia.org/wiki/天草陶石
https://store.hasamiyaki.jp/blog/yomimono/22440/
https://www.iyoirc.jp/post_industrial/20130601/
https://shiro.hakutake.co.jp/n/n4c87d7e7bd00