【お酢】
お酢は、人類が作り出した最も古い調味料の一つです。その起源は、果物などを保存するうちに自然発酵でお酒が生まれ、そこにさらに菌が作用して酢酸が生成されたことに遡ります。フランス語の「vinaigre(ビネーグル)」という言葉も、ワイン(vin)が酸っぱくなる(aigre)ことでお酢が生まれる過程を示しています。
人間の味覚には甘味、塩味、旨味、苦味、酸味がありますが、酸味は特に注意喚起の役割を果たします。腐敗物や未熟な果実を認識させる一方で、酸味には唾液分泌を促し食欲を刺激する効果があり、さらには緊張を緩和してストレスを和らげる作用もあります。また、疲労回復や筋肉痛を緩和する効果もあり、お酢に含まれる酢酸やクエン酸などの有機酸が、疲労の原因となる乳酸を分解したり、乳酸の蓄積を抑えたりしてくれるそうです。
古代の文明の中で、最初に酢を使用したのはエジプトであると考えられています。日本は仏教の伝達とともに肉食を禁じたために、魚や野菜を調味して食する文化が発達して、貴重な生の魚介類を食べる刺身を食するのにお酢と塩が利用されました。奈良時代には、貴族の間で「四種器」と呼ばれる、醤、塩、酢、酒のセットが用いられ、酢は高級品として扱われていました。平安時代には、魚介類を細く切った「鱠(なます)」が登場し、室町時代には「氷頭なます」や「酢の物」などが作られました。お正月料理の「紅白なます」はその名残といえます。江戸時代になると、醤油の普及により、生魚を醤油とわさびで食べる今日の「刺身」文化が確立しました。同時に、酢も「二杯酢」「三杯酢」など、味噌や醤油との和え酢が工夫され用いられていくようになりました。
世界中で作られるお酢は、その土地の特産品や酒造文化に由来しています。たとえば、アジアでは米酢、中国北部では雑穀酢、南欧ではワイン酢、アメリカやドイツではリンゴ酢、イギリスでは麦芽酢、中東や北アフリカではデーツ酢が一般的だそうで、その土地の文化や伝統を反映しています。
最近の私のお気に入りのお酢を使った料理は、台湾の朝ご飯の定番「鹹豆漿(シェントウジャン)」です。この料理は、温かい豆乳にお酢を加えることでおぼろ豆腐のように固まるスープです。具材にはラー油、醤油、小ねぎ、干しえび、揚げパン(油條)、たくあん、パクチー、ザーサイなどが使われ、ほっとする優しい味わいです。私が作るときは具材をアレンジしますが、中国の香酢や黒酢を使うと、独特の風味が加わりおいしく仕上がります。手軽にできて体が温まる一品なので、これからの季節にもおすすめします。ぜひ試してみてください。
世界中の人の健康や食文化を支えてきたお酢に感謝し、お酢をもっと活用してみたくなりました。
THE 醤油差し
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白木屋漆器店 手塩皿
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白山陶器 平茶碗
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東京豆漿生活
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参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/酢
https://www.iio-jozo.co.jp/mame/history.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/膾
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/54/3/54_153/_pdf
https://taiwan-ten.com/sweet-taiwan-time/3345
https://tdu.repo.nii.ac.jp/record/205/files/11.%E5%A4%96%E5%86%85%E5%85%88%E7%94%9F%E3%80%80.pdf