【山形県・河北町の「つったい肉そば」】
「つったい」というのは、山形県の内陸弁で「冷たい」を意味する方言です。その「つったい」を名に冠した「つったい肉そば」は、山形県の河北町(かほくちょう)を代表する名物の一つ。コシが強いそばに、鶏肉からだしを取った甘じょっぱい冷たいスープ、歯ごたえのある親鶏と刻んだ白ねぎがのっているのが河北町では一般的なスタイルです。
その肉そばの始まりについては諸説あるのですが、一つには、戦前、そば屋が居酒屋を兼ねていた河北町では、馬肉の煮込みをつまみにしてお酒を楽しみ、そばでしめるというのが常でした。ある日、お客さんが残った馬肉をそばに入れてみたところ思いの外おいしかったことから、この食べ方が広がったのだそうです。戦後は、調達のしやすさから、馬肉はどの家でも飼われていた鶏肉に変化し、さらに、しめとして食べるときに伸びにくくそばのコシも保てるようにと、スープを冷やして食べる方法が定着しました。ちなみにその冷たさはというと、もともとは常温に近い温度が好まれていましたが、最近ではキンキンに冷たいものも登場するなど、スープの温度とそばの食感や風味の違いでお店の個性が楽しめます。
さて、山形県に32年間住んでいた私ですが、この「つったい肉そば」を知ってはいたものの長らく食べたことがなく、初めて食べたのは山形を離れることになった最後の夏でした。友人が連れていってくれたお店で食べたおいしいつったい肉そばの味が忘れられず、しばらく夏になると思い出すことが続いたのですが、最近になって近所のスーパーで親鶏肉を見かけるようになり、このたびようやく自宅で「つったい肉そば」を作ってみようと思い立ったのです。
まずは、肉そばの主役となる親鶏と、山形のそばを準備。そして東日本ですから、ねぎはもちろん白ねぎです。親鶏を茹でて調味料を加えスープを作り、それを鶏肉ごと冷蔵庫で冷やす手間はありますが、「つったい」のためには避けて通れない大切な工程です。この日は暑かったので、スープだけでなく、器も冷蔵庫でキンキンに冷やしました。茹で上がったそばを氷水でしめ、青龍窯のどんぶり碗と一陽窯の麺鉢17cmに、すべての具材とスープを盛り付けて完成です。出来上がった懐かしのつったい肉そばは、親鶏のコクのあるうまみと歯ごたえが際立ち、家庭でも気軽に楽しめる一品となりました。河北町では、夏でも冬でも食べられているつったい肉そば。ぜひご自宅で作ってみてください。
つったい肉そば(2人分)
[材料]
親鶏肉(または鶏もも肉) 約150g
水 800ml
酒 50ml
みりん 大さじ1
砂糖 大さじ1/2
めんつゆ(2倍濃縮の場合) 大さじ1
濃口醤油 50ml
白ねぎ(小口切り) 適量
そば 2人前
(お好みで塩少々 ※氷を入れて食べる場合は、塩でスープの仕上がりを少し濃い目に調整してください)
[作り方]
1. 鍋に水と鶏肉を入れ、弱火から加熱し肉に火を入れていく。
2. 煮立ったらアクを取り、酒を加えて弱中火で10~15分煮る。
3. みりん、砂糖、めんつゆ、醤油を加え、更に10分煮る。
4. 火を切ってそのまま置き、粗熱を取る。冷蔵庫で好みの温度まで冷やす。
5. 鍋に湯を沸かし、沸騰したらそばを入れて少し硬めに茹でる。
6. 茹で上がったらザルにあけ、流水で洗い、氷水でしめる。よく水を切り器に盛り付ける。
7. スープをかけ、刻みねぎとスライスした親鶏をのせて出来上がり。
青龍窯 どんぶり碗
https://www.shokunin.com/jp/seiryu/donburi.html
一陽窯 麺鉢 17cm
https://www.shokunin.com/jp/ichiyou/menbachi.html
参考資料
https://www.town.kahoku.yamagata.jp/soshiki/shoko/kankousinkou/3341/672.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B7%E3%81%9F%E3%81%84%E8%82%89%E3%81%9D%E3%81%B0
https://www.lifeplan.or.jp/alps/alps_pdf/alps114/alps114_64.pdf (参考レシピ)