【伊根の舟屋】
お盆に初めて訪れた、海に浮かぶまち・伊根町。「日本のヴェネツィア」とも例えられますが、一目見たら忘れがたく、今もまだあのまちの景色と風情の余韻の中にいます。
伊根町は、京都府・丹後半島の東端の伊根湾に面した小さなまち。伊根湾の沿岸には、海に迫り出すように約230もの民家が軒を連ね、伊根町ではこのような民家を「舟屋」と呼んでいます。かつては、一階に船を収納し、二階は網の干し場や漁具置き場として使われていました。京都市内から北へ車を走らせて約2時間のところにある天橋立を訪れたあとに、更に北へ約30分車を走らせ、伊根町を訪れました。エメラルドグリーンの海の色と、真夏の日差しに照らされてゆらゆらときらめく水面の美しいこと。舟屋群は古いまま大切に残されており、伊根町を歩いていると日本の原風景を感じさせられます。
伊根町に行ったら、舟屋や海を見ながら歩き、ゆったりと時間を楽しむのが最適な過ごし方ですが、いくつか立ち寄りスポットがあります。まず、「向井酒造」で伊根町のお酒、「伊根満開」をお土産に買いましょう。伊根町で復刻栽培した古代米(紫黒米)が使われた、ロゼワインのような色合い、甘酸っぱさのある日本酒。自分用と、お世話になっている方にも買っていったところ、大変喜ばれました。伊根満開と一緒に酒粕アイスも買って、食べ歩き。やさしい甘さの中に、ほのかにお酒のコクと深みを感じておいしかったです。
もう一軒おすすめしたいお店が、向井酒造から歩いてすぐのところにある台湾茶専門店「靑竈(チンザオ)」。民家のような佇まいで、戸の横には褪せた木の看板が置いてあり、「舟屋で台湾茶のめます」の文字。恐る恐る舟屋の戸を開けて中に入り、薄暗い店内を奥に進むと、眩しいエメラルドグリーンが目に飛び込んできました。裸電球の最低限の灯りにしてくださっているおかげで、海の色が、まるで世界の中でここだけに色がついているかのように、一際鮮やかに感じられました。舟屋の中は静かで、とぷん、ちゃぽん、というやわらかい波の音が心地よく耳に入ってきます。海と舟屋群を眺めながら、いつまででもいられる、と思いました。
暑い日だったので、水出しの「東方美人」と「文山包種茶」という2種類の台湾茶とお茶請けをいただきました。色もきれいで、香りや味まで華やかですっきりときれい。台湾産茶葉の販売店の一部で喫茶をされているため、この空間で、本格的なおいしい台湾茶がいただけるのです。飲み終わるころには、潮が満ちるように心まで満たされて、お店をあとにしました。ここにいた時間の間だけ現実世界の記憶がぽっかりと抜けて、空っぽになってただ海に浮いていたかのような、不思議な時間を過ごせる場所でした。
その後乗った海上タクシーでは、地元の船頭さんたちが自分の船でガイドをしながら、なかなか歩いて行けないような舟屋のほうまで伊根湾内を周遊してくださり、とても面白く、風が気持ちよかったです。伊根町は人もそれほど多くなく、まちをのんびりと歩いている時間も、船から流れる景色を眺めている時間も、どれをとってもすばらしかったですが、静かな舟屋の中から見たあの海の色は、しばらく忘れられそうにありません。
伊根の舟屋
https://www.ine-kankou.jp/funaya
向井酒造
https://maps.app.goo.gl/NGDzLHRtrWrNULHj7
台湾茶専門店 靑竈
https://maps.app.goo.gl/hvEZenvaA2m1HFDZ8
参考資料
https://www.uminokyoto.jp/spot/detail.php?sid=33
https://www.uminokyoto.jp/city/detail.php?area_id=6
https://www.ine-kankou.jp/view/seataxi
https://www.kuramoto-mukai.jp/