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【あてなるもの、かき氷】

ふわふわに削られた真っ白な氷と、キラキラと鮮やかに輝くシロップ。燦々と照らす太陽の下で、暑い日であればあるほどかき氷が食べたくなるなんてことはありませんか?

清少納言の代表作『枕草子』の四十二段にはこう書かれています。「あてなるもの。薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて、新しきかなまりに入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪の降りかかりたる。いみじううつくしきちごの、いちごなど食ひたる」。あてなるものとは、現代語訳で、高貴なもの、上品なもの、気品があるもの。清少納言が暮らしの中で見つけた高貴ですてきなものをいくつも書き並べているようです。

なかでも、「削り氷にあまづら入れて、新しきかなまりに入れたる」という部分は、新しい金属の椀に入れたかき氷のことを表しています。当時の氷は、冬の間に雪解け水を使った池で自然の冷気によって凍らせたもので、氷室と呼ばれる洞窟や地面に掘った穴に茅葺などの小屋を建てて覆うことで外気から守り保管していたそうです。製氷技術や冷凍貯蔵技術のない時代に、季節を越えて保管されていた氷は、夏になると貴族の元へ運ばれました。あまづらは、ツタの樹液を煮詰めて作る平安時代の甘味料のこと。もちろん甘いもの自体も希少な時代です。キズ一つない金属の椀に、夏まで保管されていた貴重な氷を盛り、黄金色のあまづらをかけるのですから、貴族のみが食べられる雅なものだったと想像できます。器が氷で冷えて、うっすらと白く水滴をまとう様子もきっと美しく見えていたのではないでしょうか。

大寺幸八郎商店のかなまりは、この四十二段の一節から名付けられました。一つ一つ錫の板を型に打ち付けて形作られており、程よい重厚感があります。涼しげで表面が光に反射し美しく輝きます。器自体も冷たくなるため、ひんやりとした食べ物にとてもよく合います。暑い夏にはかなまりで、雅やかな気分を味わってみてはいかがでしょうか。

かなまり
https://www.shokunin.com/jp/otera/kanamari.html

参考資料
http://kakigoori.or.jp/amadura
https://www.toraya-group.co.jp/corporate/bunko/historical-personage/bunko-historical-personage-007
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/氷室