【京都のおうどん】
箸で持ち上げると簡単にちぎれるくらい、くたくたになるまで茹でられたやわらかいうどん。京都のうどんは昔から「腰抜けうどん」と呼ばれるほどコシがないのが特徴です。コシのあるうどんを食べ慣れていると、そのやわらかさに驚かれるかもしれませんが、京都のうどんは京料理と共に発展してきた昆布や鰹のふくよかな香りがする「だし」が醍醐味。やわらかいうどんには、そのだしが絡み、味がしっかりとしみ込んでいることから、だしそのものを楽しむためにはそのやわらかさが必要不可欠なのかもしれません。
京都のうどんといえば、お揚げさん(油揚げ)をのせた「きつね」。そして、刻んだお揚げさんとあんかけで“きつねがドローンと化けた”「たぬき」をはじめ、甘い油揚げを玉子でとじた「きぬがさ」や、風邪を引いたときの定番メニューで、玉子とあんかけに生姜が入った「けいらん」、さらに「しっぽく」に「のっぺい」など、お店のお品書きには聞き慣れない言葉が並んでいます。今回はその中でも、京都の「きつね」に注目してみました。
きつねうどんの始まりは、1893年(明治26年)ごろに、大阪の船場にある「松葉屋(現・うさみ亭マツバヤ)」というお店で、稲荷寿司に使う甘く炊いた油揚げを添え物として出したのを、客が素うどんにのせて食べたのが最初だといわれています。関西一円では、狐は伏見稲荷神社の神の使いとされており、狐の大好物である油揚げがのったうどんは、縁起の良い食べ物として考えられてきました。京都のきつねうどんには2種類あり、一つは甘辛く炊いたお揚げさんがのった「甘ぎつね(甘きつね)」。もう一つは、「刻みきつね」といい、短尺状に刻んだお揚げさんがのったもの。刻みきつねは、舞妓さんが食べやすいようにお揚げさんを細く小さく刻んだのがメニューとして定着したものだそうです。京都ならではのストーリーがあるきつねうどんですね。
ちなみに京都で油揚げのことを表す「お揚げさん」という言い方にも、油揚げに対する特別な思いが込められているように感じます。お茶、お豆腐、おうどんのように、単語の前に「お」が付くものは多い中、最後に「さん」まで付くのはそんなに多くないそうです。お豆さん、お粥さん、お天道さん、お月さん、そしてお揚げさん。そんなお揚げさんは、昔から京都の暮らしに密着した、特に親しみのある食材なのかもしれません。
今出川ショールームから徒歩20分の場所にある、京都最古の花街ともいわれる上七軒には、1929年(昭和4年)創業のうどんとそばのお店「上七軒 ふた葉」があり、京都ならではのさまざまな種類のうどんを楽しむことができます。今回は「きつね」と「けいらん」を注文。文字どおり「箸で持ち上げるとちぎれる」、やわらかくてだしがよく絡んだうどんは、冷房で冷えがちな夏の体を労わってくれるような優しい味がします。ジューシーなお揚げさんと、シャキシャキとした食感の九条ねぎが入ったきつねうどんは、昔からの定番メニューで、遠方からわざわざ食べに来られる方もいらっしゃるそうです。京都にお越しの際には、ぜひその土地ならではのうどんのメニューを楽しんでみてください。
上七軒 ふた葉
http://www.futaba-kami7ken.com/
今出川ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/imadegawa.html
参考資料
https://wazuka.fujiya-taiken.com/about-kyoudon/
https://www.mbs.jp/kyoto-chishin/trip/tripblog/tsubuno/74643.shtml
https://souda-kyoto.jp/guide/theme/kyoto-udon/index.html
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/39_17_osaka.html
https://nanzenjitofu.jp/columns/%E3%81%8A%E6%8F%9A%E3%81%92%E6%84%9B/