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【箱根西麓三島野菜】

伊豆半島の付け根部分に位置する静岡県三島市では、「箱根西麓三島野菜」と呼ばれるブランド野菜が生産されています。箱根西麓三島野菜は、箱根山の西南に位置する三島市山田~山中・佐野地区、標高50m以上の高原にて栽培される野菜で、「箱根西麓三島野菜ブランド推進協議会」が定めた基準に基づいて認証されています。

三島野菜が栽培される箱根西麓地域には、富士山や箱根山の噴火によってもたらされた火山灰土壌が堆積しており、柔らかく水はけの良いこの土は野菜の生育に非常に適しています。また、南向きの斜面に立地する畑は風通しも日当たりも良好で、野菜は日中にたっぷりと日光を浴びて盛んに光合成をします。対して朝晩は霜が降りるほどに冷え込むために、野菜の呼吸が抑制されて、日中に作り出した栄養素をしっかりと溜め込むことで、甘みが強く実の詰まった野菜が育ちます。富士山や箱根山、駿河湾などの大自然が織りなすこのような独自の環境と、生産者の手間ひまを惜しまない丁寧な仕事とが合わさることで三島野菜の高い品質が保たれています。

また、三島野菜は「坂もの」とも呼ばれ、歴史的にも古くから愛されてきました。先述したような恵まれた自然環境により、箱根西麓地域では古くから良質な自生野菜が生育していたとされています。たとえば精進料理が流行した鎌倉時代には、この地域の野菜のおいしさが鎌倉をはじめ各地の人々にも知られていたと語られています。そして時が流れ江戸時代が幕を開け、江戸と京都とを結ぶ東海道が整備されると、三島には東海道五十三次の一つである三島宿が置かれました。小田原宿から箱根峠を越えて三島宿へと至る「箱根八里」は東海道随一の難所とされ、箱根山西麓地域には幕命により新たに「五ヵ新田」と呼ばれる5つの集落が設けられました。そこに暮らす人々は、農作業の傍ら旅人に対して商売を営んだり労働力を提供したりすることによって生計を立てていました。しかし、明治時代に入り東海道線が開通すると、箱根路を人力で超えていく旅人は減少していきます。それに伴い、五ヵ新田の人々も次第に旅人相手の商売から離れ、新たに山麓を開墾して本格的に農業に従事するようになりました。収穫された野菜は箱根や伊豆の温泉旅館などに卸され、このころから「坂もの」と称されるようになりました。

ところで、三島野菜には「三島甘薯」「三島大根」「三ツ谷白菜」などの数品目が含まれるのですが、その中でも代表的なのが「三島馬鈴薯」です。三島馬鈴薯は、濃厚でコクのある味に、「しっとり」と「ほくほく」の食感を併せ持つメークインで、人の目と手を頼りに丁寧に収穫することで守られる「肌の美しさ」が魅力です。昭和45年ごろから半世紀にわたって栽培され続けてきた伝統を持ち、農林水産省が制定する「地理的表示(GI)保護制度」にも登録されているブランド品です。なんと市場に出回るのは7月のたった1カ月間のみ。日本一厳しいとも称される厳格な検査を経て出荷され、ほかの産地のメークインと比べても高値で取引されているそうです。

そんな三島馬鈴薯を、三島市を訪れた多くに人々に食べてもらいたいと生み出されたのが、ご当地グルメ「みしまコロッケ」です。みしまコロッケの認定条件はただ一つ、三島馬鈴薯(メークイン)を100%使用していることで、そのほかの具材や形状などは自由とされているため、お店ごとにバラエティー豊かなコロッケを楽しめます。「みしまコロッケの会」によって発行されている食べ歩きマップを片手に、街を散策しながらコロッケを食べ歩くのが三島観光の醍醐味と言えるでしょう。ついあれもこれも気になって、気がつけばコロッケ巡りだけでお腹がいっぱいです。三島市を訪れる機会があればぜひ皆さまもお試しください。

さて、私はこれまでブランド野菜に対して、その高級感ばかりが一人歩きしたイメージを持っていたのですが、その奥にある作り手のこだわりや歴史性などに目を向けるとまた違った見え方がありました。また、ブランド化することで生産者や伝統を守るという点では、当店で扱っているような工芸品とも通ずる部分があるようにも感じられ興味が湧きました。今後は、旅先で工芸品やご当地グルメをチェックするように、その土地のブランド野菜にも注目してみようかと思います。

ショールームのご案内
https://www.shokunin.com/jp/showroom/

参考資料
https://hakoneseirokumishimayasai.jp
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/mishima_info/shun/shosai008221.html
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/ipn028758.html
https://www.ja-fujiizu.or.jp/localspecialty/tokusan/misimabareisyo.html
https://pd.jgic.jp/register/entry/18.html
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/mishima_info/croquette/
https://minorasu.basf.co.jp/80148