








【札幌湯めぐり紀行】
北海道には数々の温泉地があり、気持ちとしては北海道湯めぐりと銘打っていきたいところですが、一気にさまざまなエリアを回るのはなかなかに至難の業。少しずつ楽しんでいきたいと思います。そこでまずは、札幌市内にあり市街地からのアクセスも良い、定山渓・豊平峡・小金湯という3つの温泉を巡っていきましょう。
北海道の観光において公共交通機関だけでも目的地に辿り着けるかどうかは、人によってはとても重要なポイントになりますよね。今回ご紹介する3つの温泉は、どれも「じょうてつバス」の路線で行くことができるのでその点は安心です。またいずれも駐車場はしっかりあるので、車でドライブを楽しみながら時間を気にせずに入湯するのもいいですね。今回は札幌駅からじょうてつバスに乗り、市街地から最も離れた場所にある豊平峡温泉から順に、札幌駅に向かって帰ってくるルートをイメージしてご紹介してみようと思います。
まずは札幌駅からじょうてつバスに乗り、1時間半ほどで豊平峡温泉に到着します。碁盤の眼状に広がる札幌の市街地を抜け、徐々に景色は移り変わり、いつの間にか山々に囲まれている。そんな1時間半の道のりは、なんだか少しずつ日常を離れる気持ちの準備をしていくようです。豊平峡温泉は、訪れたことのある友人が皆おすすめする温泉だったので個人的にとても楽しみでした。そして皆が口を揃えて「インドカレーね」というのです。私の中では温泉とインドカレーが結びつかず、ずっと頭にはハテナが浮かんでいたのですが、実際に豊平峡温泉の看板が掲げられた建物に入った途端、カレーのおいしそうな香りが漂ってきました。食堂の厨房はガラス張りで、中では本場の職人さんがナンを焼き、カレーを煮込んでいるのです。そうかと思えば厨房の一角には蕎麦を挽く石臼があり、本格的な十割そばまで楽しめるといいます。そしてここは温泉、なんとも不思議な世界観です。豊平峡温泉は日帰り入浴のみの施設。温泉は全国的にも数少ない100%源泉かけ流しで、冷水による温度調節や追い焚きを一切せず、地中からの源泉を直接浴槽に注いでいるそうです。大自然の中にある露天風呂から眺める雪景色が本当にすばらしく、言葉を忘れました。四季折々の絶景風呂を求めて、そしてレパートリー豊富なインドカレーを求めて、何度でも通ってしまいそうです。
豊平峡温泉への名残惜しさを抱えつつもバスに乗り、10分ほどで定山渓の温泉郷に到着です。定山渓温泉は、今回紹介する中では最も名の知れた温泉かと思います。登別温泉(登別市)・湯の川温泉(函館市)と共に「北海道三大温泉」にも数えられ、慶應2年の開湯から155年余りの歴史を誇る名湯です。定山渓という名前は、この温泉の礎を築いた修験僧の「美泉定山」の名を取って付けられました。現在は車かバスでしか行くことができませんが、大正2年から昭和44年までの間には、観光客の輸送や木材・鉱石等の貨物輸送を目的とし、札幌の市街地から定山渓までを結ぶ「定山渓鉄道線」という鉄道路線が通っていました。全盛期には、夜間の出発で往復乗車券と入湯券・ビール・とうきび・枝豆をセットにした「月見電車」なども運行されていたそうです。なんと魅力的なセットでしょう。また、定山渓には河童伝説が伝えられており、それにちなんだ河童の「かっぽん」というキャラクターがいるほか、街のそこかしこで河童(の像など)に出会います。河童たちを探しながら温泉街を散策するのも楽しいかも知れません。さらに最近は新しいカフェやショップがオープンしているエリアもあり、美しい自然の中でこだわりのお料理やスイーツを味わうという、温泉だけではない定山渓の新たな一面が顔をのぞかせています。
定山渓の温泉街を後にし10分ほどバスに揺られると、小金湯温泉に到着します。小金湯温泉には、2つの入浴施設があり、いずれも日帰り入浴・宿泊ともに可能です。私は今回「まつの湯」に行ってみましたが、露天風呂では目の前に山が迫ってきて今にも鹿が顔を出しそうな雰囲気がありました。すぐ下を流れる川のせせらぎや鳥のさえずりに耳を傾けながら、ゆっくり流れる雲をぼーっと眺めるとても静かな時間が流れており、少しとろっとしたお湯がとても好みでした。また、約80種類もの豊富なメニューを揃えるお食事処があり、湯上がりに畳に腰を下ろしておいしいご飯を食べるという、最高のぜいたくが実現しました。そして小金湯温泉に行った際には、ぜひ隣にある「札幌市アイヌ文化交流センター・サッポロピリカコタン」にも足を運んでみてください。アイヌ民族の伝統衣服や民具などが数多く展示されており、そのほとんどを手にとって見ることができます。ガラスケースを隔てて眺めるだけではできない発見がたくさんあるような気がします。
さて、あとは小金湯温泉から札幌駅まで1時間半弱のバスの旅を残し、この札幌湯めぐり紀行も締めくくりとなります。少々長くなってしまいましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。雰囲気を少しだけでも楽しんでいただければ幸いです。皆様もぜひ訪れてみてくださいませ。
小樽ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/otaru.html
参考資料
https://hoheikyo.co.jp
https://jozankei.jp
https://ja.wikipedia.org/wiki/定山渓鉄道線
http://www.matsunoyu.co.jp/index.html