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【スリップウェア】

「スリップウェア」とは、一度は途絶えたものの日本でよみがえったイギリスの伝統的な装飾技法のこと。粘土と水を混ぜてクリーム状にした「スリップ(泥漿)」といわれる化粧土を、生乾きの素地の器の表面に装飾し、焼成して作られます。人の手による自然な模様や素朴さが魅力です。

このスリップ装飾は、広義には最古のもので紀元前5000年ごろの中国や中東で作られたと考えられています。その後、アフリカの多くの地域、南北アメリカ大陸の先住民の間や初期の朝鮮半島、ミケーネ文明、古代ギリシアの陶芸、イスラームの陶芸において、鍋や皿の装飾に使われました。18世紀のイギリスでは、日用雑器として庶民が調理用に使う、シンプルで抽象的な文様と素朴な風合いのパイ皿などのオーブンウェアとして作られるようになりましたが、19世紀末ごろには産業革命の波とともに衰退し、一度途絶えてしまいます。

それから数十年後の1920年代、柳宗悦やバーナード・リーチをはじめとする手仕事の日常品に美を見出そうとする民藝運動の創始者たちは、一冊の洋書『Quaint Old English Pottery』からスリップウェアの存在を知りました。彼らはその魅力に惹き込まれ、その技術を確立し復活しました。現在スリップウェアは日本各地に産地が点在し、今もなお受け継がれています。

丹窓窯は、日本六古窯(瀬戸、常滑、信楽、越前、備前)の一つに数えられる丹波篠山市今田地域にある窯元です。丹波焼は、平安時代末期から鎌倉時代初頭に発祥したといわれ、国の伝統的工芸品として指定されています。丁寧な手仕事によって描かれたスリップウェアは、懐かしさや温もりを感じる器です。ショールームにいらした際にはぜひお手にとってご覧ください。

丹窓窯 スリップウェア
https://www.shokunin.com/jp/tansou/slipware.html
雑誌「LaLa Begin 2024年4・5月号」に掲載
https://www.shokunin.com/jp/etc/media.html

参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/スリップウェア