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【和食を科学する】

上野の国立科学博物館では「和食展」が開催されています。今回の「和食展」、美術館でも民芸館でもない科学博物館で開催されていることから、私たちのイメージとはまた違った面を覗くことができる展示になっています。日本人にとって、毎日の生活の中で当たり前に接している「和食」。それは日本の素材と、日本人の研究技術や工夫から出来上がってきたものなのです。

最初に取り上げられているのは、日本の生物多様性についてです。植物の中でも、私たちが親しんでいる野菜のほとんどが日本には自生せず、外国から持ち込まれたもの。主食の米も弥生時代になって本格的に栽培が始まった外来植物です。そんな野菜も植物であることを実感するために、花の咲いた状態の野菜の生物標本が展示されていたり、いつの時代にどこからやってきたのか映像パネルで紹介されています。そして稲についても、水分と脂肪分を取り除きプラスチックなどの合成樹脂に置き換えたプラスティネーション標本で、よりリアルに観察することができます。珍しいのが、記録のない時代に人々がどのようにして米を食べていたのか!遺跡から出土した“炭化米”も展示されています。現在CTスキャンで内部構造を調べているそうです。

世界中の異なる水質についても改めて知ることができました。水には主にカルシウムとマグネシウムのイオンが含まれていて、飲料水は元を辿れば雨水や雪解け水です。それがどのような地質でどのような経路を辿るかで水質が異なるそう。その違いは料理の方法や味にも大きな影響を与えています。日本の地形は山などの傾斜が急で険しいため、雨水の地中での滞留時間が少なく、降水量も多いのでミネラル成分も薄まります。よって日本の水は軟水。たとえば、味を楽しむ日本茶に適しています。一方ヨーロッパは一部の山脈を除いて、基本的には平坦で水の地中での滞留時間は日本と比べて長め、石灰岩も広く分布するため硬水となります。こちらは香りを楽しむ紅茶、中国茶に向いています。このように水質と食文化も科学的に理にかなっているなと納得できました。

そして古代日本のバイオテクノロジー!和食の姿を大きく変えた発酵食品です。酒や醤油や味噌などか作られる“コウジカビ”について映像を交えた展示もありました。麹とは穀物にカビを生やしたもので、米にコウジカビを生やした米麹が身近なのではないでしょうか?室町時代にはすでに麹売りがいて、朝廷や幕府が麹の流通を制限する制度の麹座があったそうです。会場の説明文には、「微生物の働きによって、人間にとって有用なものができることを発酵といい、不要なものや有害、不快なものができることを腐敗という。微生物にとってはいずれも同じ活動をしているだけ」とあり、そんなことを言われるとますます興味が湧いてしまいました。私たちが口にしている、味噌や醤油、納豆がどのような微生物が関わっているか、一瞬ギョッとしますが知ることもできます。

そのほかにも1908年に池田菊苗博士が発見した、昆布だしのグルタミン酸や、ニホンウナギの人工孵化レプトセファルス幼生の泳ぐ実物展示もあります。科学的な内容だけではなく、海藻に圧しをかけながら乾燥させて作る“海藻押し葉”というまるでアートのような標本や、思いの外豪華だった卑弥呼の食卓や、戦国武将の織田信長が徳川家康をもてなした饗応膳なども食品サンプルを使って再現されています。漫画“サザエさん”に描かれる、戦後から高度経済成長期にかけて変化していった昭和の台所、食事情を解説した展示では、楽しく懐かしい気持ちにもさせてくれます。日本の四季と食を映し出した大スクリーンの展示が終わるころには、すっかりお腹も空いて、今夜は何食べる?という会話が弾むことでしょう。

こちらの「和食展」では“知る”ことの大切さを感じました。そして科学的にも解明されている“おいしい”を深め、“伝えたい”という気持ちにもさせてくれます。なんとなく日本人で良かったなぁという気分になる展示会ですよ。QRコードで無料で聴ける英語ガイドもありますので、海外の方にもぜひ足を運んでいただきたいです。上野国立科学博物館での開催は2月25日までです。その後、各地巡回予定もありますのでお近くにお越しの際にはお立ち寄りください。

特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
https://washoku2023.exhibit.jp/
銀座ショールーム(誠に申し訳ございませんが、2024/2/11と2024/2/12は諸事情により臨時休業とさせていただきます)
https://www.shokunin.com/jp/showroom/ginza.html

参考資料
特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」公式ガイドブック