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【料亭 三宜楼】

三宜楼(さんきろう)は、かつて門司港を代表する高級料亭でした。延べ床面積1200平方メートル以上、木造3階建ての大規模な建造物で、現存する料亭建築としては九州最大級です。小高い丘の上に位置するため、関門海峡を一望できました。

明治22年、門司港が国の特別輸出港として指定され、九州鉄道の門司駅も開業しました。これを機に北部九州の陸上・海上輸送が急速に繋がり、金融機関や地方・中央資本の商社、海運会社の支店などが相次いで門司港地区に進出、経済人や文化人が集う場所にもなりました。関門の地を訪れた人々は、外国へと繋がる門司港と海を見下ろしつつ酒を酌み交わし、日本の近代化へ向けての議論を重ねていたかもしれません。

当時の旧門司市で発行されていた、福岡県の地方紙大手3社の一つ、門司新報には、「建物は新古の粋を集め優雅にして堅牢、間取りの如きも大小十五を算し、且つ眺望の佳なる相候ち、料亭としては北九州に比類なき偉観を呈して居る」と紹介されるほど、華やかな場所であったことがうかがえます。

三宜楼を訪れると、意匠的な見どころに気付きます。特に、部屋ごとに下地窓や欄間に変化を持たせていて、客人を飽きさせず楽しませていたようです。

下地窓とは、土壁の一部に本塗りを施さず、竹や葭(よし)による小舞下地を露出させた窓のことで、日本の茶室や民家に見られます。伝統的な日本建築にはよく使われており、その形状も多様です。「禅と円通」の心を表しているとされる円や、魔除けや福を招く護符の意味合いのある、いのししの目に由来した猪目(いのめ)などは、目にしたことがあるのではないでしょうか。

三宜楼には、松竹梅、また山や雲など、形を見ればすぐに想像できるものから、「雷が田んぼに落ちると豊作になる」というような稲作が盛んな土地の言い伝えが込められた物語性のあるものまで見られ、当時の建築の手間と遊び心も随所に感じられます。

館内は自由に見学でき、関門ふぐ料理を召し上がることもできます。現在では周辺に高い建物が立ち並んだため、関門海峡の一望は叶いませんが、門司港エリアを見られる部屋もあるため、当時この場所で流れていた時間を想像できると思います。近くにいらっしゃった際に訪れてみてはいかがでしょうか?

三宜楼
https://goo.gl/maps/YEKoHQH2U1wXQxfe6
若松ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/wakamatsu.html

参考資料
https://www.mojiko.info/3kanko/sankiro/
https://www.japanheritage-kannmon.jp/bunkazai/index.cfm?id=9
http://www.kaito.ne.jp/kaito-sankirou.html