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【ミキ】

鹿児島県は奄美群島と沖縄に伝わる伝統飲料「ミキ」をご存じでしょうか?地域によって作り方が異なり、味も、奄美群島では甘酒やライスヨーグルトのような、沖縄では甘いライスミルクのような風味の発酵飲料です。地元のスーパーなどでも見かけられ、滋養強壮や、食欲が低下する夏や風邪のときに飲まれている栄養補給ドリンクです。

「ミキ」は、古くは農作物の豊作を願い、豊年祭などに作られ神に捧げられてきた、神酒「御神酒(おみき)」に由来し、もともとは「口噛み酒」として造られていました。「口噛み酒」とは、水に浸けた米を若い巫女が口の中で噛み、唾液で発酵させたお酒のことです。映画『君の名は。』で「口噛み酒」が出てきましたので、記憶にある方も多いかもしれません。しかしその習俗は、明治維新の廃藩置県によって琉球王国が解体され廃れていき、人間の唾液の代わりに生のさつまいもや麦芽が使用されて、現在の「ミキ」になったといわれています。

奄美群島の文化は、海を隔てた大陸や列島本土と南洋との交易、琉球や薩摩の介入といった歴史の影響を受け、沖縄や鹿児島とは違う独自の文化を持っています。100歳以上のセンテナリアン(百寿者)が多い長寿の島々として知られ、多様性に富む腸内フローラ(腸内細菌)が長寿の健康を支えてきた可能性があるそうです。奄美の長寿者の腸内フローラには注目すべき3つの菌があります。加齢とともに徐々に減るので、老化と関わると考えられている「ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)」、アスリートに多く腸管バリア機能を高めることで抗炎症作用があるとされる「アッカーマンシア属」、欧米人に多く日本人の腸内にほとんど棲息していない肥満抑制作用があるという「メタノブレビバクター属」です。奄美で親しまれている「ミキ」1mlには、乳酸菌が1億個ほど含まれているそうで、それが長寿の秘密の一つなのかもしれないと考えられています。

奄美群島の「ミキ」は、アルコール飲料ではなく乳酸菌発酵飲料で、うるち米と生のさつまいもが原料です。人肌まで冷ましたうるち米のお粥に生のさつまいもをすりおろして加えて撹拌すると、さつまいもに含まれるデンプンのアミラーゼの働きによって、粘度は低下して糖化が起きて液状になってきます。夏場は一晩、冬場は2~3日ほど混ぜながら置いておくと、発泡し発酵してきます。作りやすい分量は、米250gに対し、さつまいも50gと水1L。発酵後は、お好みでミキサーにかけてなめらかにします。蓋を緩めた容器に詰め、1日1回はかき混ぜて冷蔵庫で保存、賞味期間は2週間ほどで発酵が進むと酸味が出てきます。早めに飲むのがおすすめです。さわやかで甘味があります。

一方、沖縄の「ミキ」は、主に米と麦に砂糖を加えて煮た、発酵させていない甘い重湯のような飲み物です。「ミキ」以外に、玄米で作られた「ゲンマイ」という名前でも出ていて、「飲む極上ライス」がキャッチコピーです。

どちらも栄養価が高く消化に負担がかからない「ミキ」。ご興味のある方は作っていただくのも良いですし、旅行の際には試してみる価値のある飲み物です。

スズ木 羽釜ごはん鍋
https://www.shokunin.com/jp/suzuki/
大久保ハウス木工舎 調理匙
https://www.shokunin.com/jp/okubo/saji.html
大矢製作所 銅おろし金
https://www.shokunin.com/jp/oya/
ジャパンポーレックス セラミックおろし
https://www.shokunin.com/jp/porlex/oroshi.html

参考資料
https://tokusengai.com/_ct/17236475 (レシピ)
https://tokusengai.com/_ct/17236686
https://ja.wikipedia.org/wiki/みき_(飲料水)
https://ja.wikipedia.org/wiki/神酒
https://ja.wikipedia.org/wiki/口噛み酒
https://ja.wikipedia.org/wiki/奄美大島
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/95/11/95_11_830/_pdf/-char/en
https://www.asahi.com/relife/article/13755425