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【ひしお(醤)】

「ひしお(醤)」は、仏教の伝来と共に中国から伝わった「穀醤(こくびしお)」が日本で発展し、やがては現在の味噌や醤油の原型となった調味料といわれています。7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存する日本最古の歌集である『万葉集』にも登場するほど古い歴史を持つひしおは、炒った麦や大豆などの穀物に、麹と塩を加えて発酵させ、熟成させたもの。そのひしおが詠まれているのが、「酢、醤、蒜、鯛、水葱を詠める歌」と題されているこちらの歌です。

“醤酢(ひしほす)に 蒜搗(ひるつ)き合(あ)てて鯛願ふ 我れにな見えそ 水葱(なぎ)の羹(あつもの)”

『万葉集』 巻十六 三八二九番歌 長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)

醤酢とは、ひしおに酢を合わせた当時の高級調味料。酢は、当時米の値段の3倍の値がつけられていたそうです。蒜(ひる)は、香りの強いノビルやにんにくのような野草。水葱(なぎ)とは、水辺に生えるミズアオイで、江戸時代までは安価な野菜として食用にされていました。そして羹(あつもの)とは温かいスープのこと。つまり大体の意味はというと、「ひしおと酢を混ぜたものに、蒜を薬味にして鯛を食べたいのに、水葱(なぎ)の吸い物なんて見せないでほしい」といったところでしょうか。当時の人々の食生活や食の好みが伝わる、珍しい歌とされています。

現在では、豆麹と麦麹を醤油に漬けて発酵させて作るひしおですが、普段の食生活で調味料として使うことで、酵素や乳酸菌、酵母などを取り入れることができます。豊富なビタミンB群や食物繊維、酵素を含み、血行の促進や代謝アップ、消化吸収を助ける役割があるとされています。食べ方は、そのまま野菜や冷奴にかけたり、白ご飯のおともに、ドレッシングやつけダレとして、醤油の代わりに調味料としても使えるのですから、用途はとても幅広いといえます。

今回、そのひしおを、一陽窯のフードコンテナ大を使って仕込んでみました。多孔質である備前焼は乳酸菌や酵母の住みかになりやすく、温度変化が緩やかなことから、発酵を進めるのに適した素材です。

[材料]
ひしお麹 165g
醤油 180ml
水 90ml
昆布 5cm角程度

[作り方]
1. 保存容器をアルコールなどで消毒する。
2. 容器に材料を入れてよく混ぜる。
3. 仕込んでから約2週間、1日1回毎日混ぜて常温で発酵させる。
4. 麹の粒が柔らかくなれば完成。ある程度発酵が進んだら冷蔵庫で保存する。

20~35度が発酵に適した温度ということで、冬季間の今は寒い台所ではなく、暖房の効いた室内で発酵させてみました。1日目は水分が目立っていた状態が、2日目になると麹が調味料を吸って水分量はぐっと減ったように見えます。底からしっかりかき混ぜることで調味料が麹全体に行き渡り、発酵も均一になります。混ぜやすいように保存容器は大きめのものを選ぶか、容器に対してひしおの量が多すぎないようにされることをおすすめします。3日目からはしだいに醤油の香りの角が取れて丸くなり、日が経つごとに香りの中に甘さが感じられるようになりました。2週間後の完成がとても楽しみです。

一陽窯 フードコンテナ 大
https://www.shokunin.com/jp/ichiyou/container.html

参考資料
http://www.meitoumiso.com/recipe_hishio.html (レシピ)
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/edo-reference05.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%86%A4
https://www.pref.nara.jp/43798.htm
http://manyou.plabot.michikusa.jp/manyousyu16_3829.html
https://miso-sommelier.com/category20/category28/note72.html