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【あてなるもの】

毎年この季節になると恋しくなる、ひんやりとした和菓子。特に、水面の如く澄み渡る水羊羹の瑞々しい艶や、エッジの効いた佇まいに合わせる器はあっただろうかと、衣替えの前のようにそわそわします。これから恋しくなる冷奴も、その潔い姿がより心地よく感じられる器はどれだろうかと辺りを見回すのもこの季節です。

大寺幸八郎商店の錫の器は型に流し込む鋳物ではなく、職人の手によって、一つ一つ錫の板を型に打ち付けて形作られています。手で形が変えられる自在さと丈夫さを併せ持ち、長年の暮らしに寄り添う工芸品ならではの耐久性を兼ね備えています。

枕草子の「あてなるもの」の一節から、かなまり(金鋺)と名付けられたこの器は、これからの季節のあてなるもの(「上品で雅なもの」という意味)をより美しく見せてくれます。

強い陽射しに夏の気配を感じた今日は、銀色の柔らかい輝きを持つかなまりに、雪と氷に見立てた2層の寒天をのせてみました。夏の太陽の欠片のような橙色の果実も、透明な寒天越しに透かして見ると、一瞬の涼しさを運んでくれるように感じます。

大寺幸八郎商店 かなまり 中
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