2026年04月



【中村銅器製作所のアルミパン】

なんとなくパスタに使うイメージがあるアルミのフライパン。肉を焼くとなると「難しそう」「くっつきそう」と思ってしばらく手が伸びなかったのですが、先日インスタグラムの「けんた食堂」さんで、トンテキをおいしそうに焼かれているのを見て、私も久しぶりに挑戦してみることにしました。

アルミパンは内側も外側も明るい銀色をしており、そのため食材の焼き色がはっきり見えて、ひっくり返したり、火力を調整するタイミングを計りやすいのがメリット。しかし、鉄のフライパンほど油がなじみにくいので、少し多めの油を入れて加熱し、十分に予熱してから調理するのがこびりつきを防ぐポイントです。

そして、アルミのフライパンがさらなる本領を発揮するのが、「肉を焼いたあと」です。肉を取り出したあとのフライパンにタレを入れて加熱し、ヘラを使って焦げ付いた部分をすべてこそげ取ると、うまみたっぷりでジューシーな肉ダレの出来上がり。ジュワジュワと音を立てるタレを、焼きたてのトンテキにかける瞬間がたまりません。

実は、この鍋肌につく焼き色は「メイラード反応」によるもの。肉に含まれるアミノ酸と糖が加熱によって化学反応を起こし、その過程でおいしさの元となる香ばしさや風味が生まれるのです。これまでは、鍋を洗う手間を考えると、肉がくっつかないように、焦げ付かないようにと、慎重に火を通していました。しかし、その焦げこそがうまみの正体だと知ると、道具に対する向き合い方も少し変わってくるように思います。

軽量で扱いやすいアルミパンを作っているのは、東京の下町で4代にわたってお鍋やフライパンを手がける中村銅器製作所。職人が一つひとつ丁寧に仕上げた道具で、アルミパンならではの料理の楽しみを体験してみてはいかがでしょうか。

中村銅器製作所 アルミパン ※形状に若干の変更がございます。
https://www.shokunin.com/jp/nakamuradouki/fryingpan.html
つちや織物所 鍋つかみ
https://www.shokunin.com/jp/tsuchiya/
conte おてがる料理トング
https://www.shokunin.com/jp/conte/tongs.html
大久保ハウス木工舎 調理匙
https://www.shokunin.com/jp/okubo/saji.html
一陽窯 深皿
https://www.shokunin.com/jp/ichiyou/deep.html
けんた食堂(レシピ)
https://www.instagram.com/reel/DU1-KCNEhWs/

参考資料
https://chomiryo.takarashuzo.co.jp/knowledge/detail/103/

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【千本ゑんま堂の普賢象桜】

春は桜でにぎわう日本列島。花見帰りにショールームに立ち寄ってくださるお客様の笑顔が印象的でした。桜前線は北上し、京都の花見シーズンはとうに終わったかと思われがちですが、遅咲きの銘木がひそかに時を待っていることをご存じでしょうか。

千本通を廬山寺通まで上ると、西側に閻魔法王を本尊とする千本ゑんま堂――引接寺があります。その歴史は古く、寺院縁起も興味深いものですが、境内には小さな花園があり、遅咲きの八重桜がこの季節の主役を担います。

八重桜の名は「普賢象桜」。室町時代からこちら千本ゑんま堂にあったと伝えられ、古い種の桜として知られています。最初の写真は4月10日前後の様子。このころはまだ五分咲きにも届きませんが、半ばほどけた蕾もどこかかわいらしく、これから次々と花開く気配が感じられます。わずかに開いた花に近づいて見ると、二本の雌蕊が長く、また少し角度を帯びているのが分かります。そのしなやかな曲線が象の牙に似ていることから、普賢菩薩の乗る象に見立てられ、この名がついたといわれます。続く写真は満開のころ。透き通るような花弁が幾重にも重なり、薄紅で、花それぞれの濃淡が異なっており、近くで見ると気品高く、遠くから眺めれば華やかに花を咲かせています。そして実はこの桜、散り際は椿のように、花冠ごと落ちるのです。これも趣のひとつ。やがて地面一面が落花に覆われます。

この季節、境内では木香薔薇や藤、射干も同時に花期を迎え、閻魔様の裏庭は彩り豊かな楽園となり、愛好者たちが自然に集まってきます。また、満開の週末にはライブイベントも開催され、近所の人々が集まり、珍しい八重桜の夜桜を楽しむ宴が始まります。ここはゑんま堂、あの世とこの世の境目であることを、ふと忘れさせるひとときです。

千本ゑんま堂のおもな年中行事は、いずれもあの世と関わり深いものばかりです。節分のかけ声は「福は内、鬼も内」、そして閻魔像の目の前で狂言が奉納されます。夏の終わりには盂蘭盆会六齊念佛の風流踊りが披露され、精霊迎えの寺として京都の人々に親しまれています。今出川ショールームからは徒歩約20分。閻魔法王様にお会いするなら、閻魔様の御縁日として、ご本尊が開帳される毎月16日がおすすめです。

千本ゑんま堂 引接寺
https://yenmado.blogspot.com/
フゲンゾウ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%82%BE%E3%82%A6
今出川ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/imadegawa.html

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【1本の糸ができるまで】

職人.com若松ショールームのある北九州には、北九州市立自然史・歴史博物館「いのちのたび博物館」という大きな博物館があります。壮大な生命の進化や人類の歩みを体感できる場所で、県外からも多くの人が訪れています。地元が北九州の私にとっては、とても身近なミュージアム。ときには、お散歩のような気持ちで足を運ぶこともあります。つい先日もそんなふうにふらりと訪れたのですが、ちょうど“糸を作る体験”が行われていて、思いがけず息子と一緒に初めての体験をすることができました。

「綿(わた)って何からできているでしょう?」というガイドさんの質問に、「綿は綿でしょ」「布団」「座布団」「ひつじ」と、子どもたちの珍回答が飛び交っていました。糸や布となって、生活の中に当たり前にあるからこそ、逆に想像がつかなかったのでしょうね。綿が植物であること。綿には白い花が咲くこと。ハイビスカスやオクラの仲間であること。綿として利用される白い繊維は、種の周りを覆っていて、取り除かなければならないこと。そんな説明をひととおり聞き終えたころには、子どもたちはとても真剣な眼差しになっていました。

実際に、まだ種が残っている綿を自分の手で取ろうとすると、これがなかなか難しい。種がこびりついているような感じです。そこで登場したのが、“綿繰り機”。ハンドルを回すとローラーが回転し、綿から種を取り除き、綿と種を分けることができる道具です。実際に体験してみると、そのスムーズさに感動しました。これを発明した人は天才だ!と子どもたちも大いにリスペクトしていました。

けれど、それでもまだ、糸でも布でもありません。種を取り除いた綿の繊維をほぐし、糸車で繊維を細く伸ばして糸にしていくこと。色を付けるなら、さらに染めること。そこからようやく糸を使って、はた織機にかけたり、縫い物ができるのだと教えてくださいました。膨大な手間ひまがかかることを知った子どもたちは、もうぐったりとしていました。私はその話を聞きながら、若松ショールームに今並んでいるINDIGO CLASSICのストールやハンカチを思い出していました。

「それだけ手間がかかってできた服だからね。昔の人は1枚を大切に、何度も何度も長く着たのよ。綿の種、育ててみたい人?」「はい!」「はい!」「はい!」さっきまでぐったりとしていたのに、子どもたちは次から次に元気に大きく手を挙げていました。綿の種は5月から6月に植えると、秋ごろに収穫できるそうです。息子の持ち帰った種は、芽となり、綿となるのでしょうか。

帰ってから、私も自分のクローゼットを見つめました。しばらく着ていない服もあります。昔と今では違うこともたくさんありますが、“知ること”“想像すること”で、意識の変化が生まれるのかもしれません。当たり前にあるものの中に、重なっている時間があります。ぜひショールームでもたくさんの商品を、実際に触れて感じ、想像を膨らませていただけたらと思います。

INDIGO CLASSIC ストール
https://www.shokunin.com/jp/indigo/stole.html
INDIGO CLASSIC ハンカチ
https://www.shokunin.com/jp/indigo/handkerchief.html
若松ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/wakamatsu.html
いのちのたび博物館
https://www.kmnh.jp/