2025年12月

S__185114632

S__185114633

S__185114634

S__185114635

【紅萬でフルーツパフェを】

神戸・元町に、神戸らしいクラシカルで重厚な建築で新鮮な果実を楽しめる、老舗フルーツサロンがあります。

「紅萬(ベニマン)」は、1912年(大正元年)創業の贈答専門果物店。1983年(昭和58年)に、神戸で初めてフルーツパーラーを始めました。渋さがありながらもキャッチーな「紅萬」という店名は、その昔、果物は鮮やかな色から「紅(赤)もの」(野菜を含めた青果実の総称を「青もの」)とも呼ばれていたこと、「萬」は「よろず」の意味があることから、すなわち「紅・あかいもの」を「萬・たくさん取り揃えている」という意味を込めて名付けられました。

紅萬は「毎日新聞神戸ビル」の1階に入っており、明治・大正期に活躍した建築家・河合浩蔵氏が設計した「横浜海上保険会社神戸支店」の面影が正面玄関や石壁に残されています。店内は、真っ白なテーブルクロスが上品な、ゆったりと落ち着いた空間。唯一あった、深いブラウンの木目のテーブルに通されました。

今の時期はいちごやシャインマスカットなどの季節限定パフェが魅惑的ですが、スタンダードなフルーツパフェを。贈答用のグレードの高い果物を一番おいしい食べごろ・食べ方で提供されているというだけあり、一つ一つの果物が生き生きとフレッシュで瑞々しく、輝いていました。

下には、バニラビーンズの風味が美しいバニラアイスと、あと味さっぱりのアールグレイゼリー。コーンフレークではない部分に、果物店としての風格と妥協のなさを感じます。すべてが軽やかに口の中で一体となり、最後まで素材そのものの上質な味わいと調和を堪能できる、まさにパーフェクトなパフェでした。コーヒーや紅茶はポットで供されるため、優雅なティータイムが約束されます。

フルーツパーラーの一角には販売コーナーがあり、果物のほかにも並んでいた無添加の自家製ジャムやドライフルーツがひときわ可憐で、色とりどりの心躍るビジュアルでした。当主の目利きによって買い付けられた厳選の果物は「ベニマンブランド」として信頼も厚く、お中元やお歳暮などの贈答用にはもちろん、神戸土産にもぴったりでしょう。

紅萬(ベニマン) 神戸元町店
https://maps.app.goo.gl/eopmnWmtWVuEHAbi8
ショールームのご案内
https://www.shokunin.com/jp/showroom/

参考資料
https://www.beniman.com/
https://www.kateigaho.com/food/temiyage/162925
https://higashinada-journal.com/spot/other/15644/

S__93831215

S__93831216

S__93831217

S__93831218

【柚木沙弥郎を巡る旅へ】

「柚木沙弥郎 永遠のいま」が先日閉幕いたしました。昨年から柚木氏のゆかりの地である岩手、岡山、島根、静岡を巡回し、東京で最終日を迎えた展覧会。2024年1月に101歳の生涯を閉じた染色家・柚木沙弥郎の75年にわたる創作活動を紹介した回顧展です。初めて制作した型染布などの最初期の作品から、101歳で手がけた最晩年のコラージュまで、自由でユーモラス、生命力にあふれる、なんともパワフルな世界が広がる展覧会でした。今回巡回した街はどこも柚木氏との縁の深い地であり、制作活動の原点やターニングポイントになっている地域です。生涯の大切な方たちと出会ったエピソードやさまざまなストーリーを想いながら作品を見ていると、いつの日か柚木氏を巡る旅に出かけたくなってくるのです。

なかでも欠かせないのは岡山・倉敷の街。柚木氏は東京田端で生まれ育ちますが、空襲で家が焼けてしまい、柚木家(倉敷市玉島)の旧宅で暮らし始めます。備中松山藩主に諸役として仕えた柚木家は、現在“西爽亭”として一般公開もされており、藩主お成りの屋敷でもあった風格ある造りや構えを見ることができるようです。そして24歳の柚木氏が就職した大原美術館。ここで民藝や染色家・芹沢銈介のカレンダーと出会い、染色の道へと歩み始めるのです。美術館のロゴも柚木氏によるもので、今も入口の壁面やチケット、絵葉書のバックスタンプなどにも使われています。倉敷の美観地区は美術館を中心とし、倉敷民藝館や日本郷土玩具館があり、柚木氏が染絵などのモチーフにしたものもチラホラ発見できるようです。柚木氏もお好きだった岡山名物のばら寿司、各家庭に伝わるお味もあり、柚木家のものは穴子と干し蝦、紅しょうが入りだそうです。駅弁にもいろいろなばら寿司があるようで、帰りの新幹線も楽しめそうですね。

そして、私も前々から気になっているのが岩手・盛岡の街。そこには宮沢賢治が生前に刊行した童話集『注文の多い料理店』を出版した光原社があるのです。光原社から出版されたのはおよそ100年前の1924年のことで、その50年後に柚木氏により型染の絵葉書が作られ、今も販売されています。敷地内にはイベントスペースがあったり、ノスタルジックな中庭や柚木家のご家族もよく立ち寄られたというカフェ「可否館」もあります。“マヂエル館”には宮沢賢治の資料と共に柚木氏の作品も常設展示されているそうです。今回の展示会の中に柚木氏が制作した“光原社マップ”という作品があり、皆がにぎやかに楽しんでいる光景が思い浮かびました。その後も盛岡の郷土のお祭り“チャグチャグウマコ”を題材にした絵葉書も作られ、地元の方々にも愛されたのではないでしょうか。10月に盛岡城址公園で開催される「北のクラフトフェア」に合わせて訪れてみたいなと思います。おそらく大にぎわいですね。

そのほかにも柚木氏の作品は、横浜にある「ディーン&デルーカ」コレットマーレみなとみらい店に切り絵アートが飾られていたり、一度泊まってみたいと思っているエースホテル京都のロゴや客室のアートワークとしても出会えます。どこも洗練された中にもほっと落ち着く沙弥郎マジック空間になっていることでしょう。すでに会期は終了していますが、柚木氏を巡る旅はこれから始まります。皆さんもお近くのゆかりの地を訪ねてはいかがですか?私も来年の予定に加えてみたいと思います。さすが柚木氏!天国へ行っても、今もなお私たちをワクワクさせてくれますね。

SIWA | 紙和 シルクスクリーン
https://www.shokunin.com/jp/siwa/yunoki.html
銀座ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/ginza.html
『柚木沙弥郎 永遠のいま』 水沢勉(監修) 
https://amzn.to/49uKc27

参考資料
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/31576?page=2
https://jp.acehotel.com/kyoto/
https://morioka-kogensya.sakura.ne.jp
https://hanahomemade.stores.jp/items/68a2f15c5d272d380ee9c45e

1

2

3

4

5

6

【旧函館区公会堂と元町】

北海道・函館市の港を見下ろす高台に、ブルーグレーと黄色の装飾が美しい洋館が佇んでいます。こちらは、国の重要文化財である旧函館区公会堂です。1910年(明治43年)に建てられた木造の洋館で、2018年から保存修理工事のため閉館していましたが、2021年に色鮮やかな姿を取り戻しました。生まれ変わったその姿を見たいと、数年前の冬の始まりに函館を訪れました。

旧函館区公会堂のある高台は、函館山の中腹に位置する元町エリアにあり、歴史的な建築物が立ち並んでいます。函館市は、修好条約の締結により1859年(安政6年)、横浜市・長崎市とともに日本で最初の外国貿易港として開港しました。開港以降、異国の文化がこの地へと流れ込み、海外様式を取り入れた建築物や宗派の異なる教会が立ち並ぶ、独特な元町の街並みが形成されました。それぞれが保存修理を重ね、歴史ある姿を今に伝えています。

なかでも、ひときわ目を引くのが、気品あふれる佇まいの旧函館区公会堂です。甚大な被害をもたらした1907年(明治40年)の大火により町会所が焼失したことを受け、その代替施設として、豪商・相馬哲平氏や市民からの寄付をもとに、1910年(明治43年)に建てられました。左右対称のコロニアル様式による壮麗なこの建物からは、当時の建築技術の高さと、大火から力強く復興しようとした不屈の精神が感じられます。

内部には、和と洋の要素が融合した貴重な調度品の数々が展示されており、当時の様子をそのままにうかがい知ることができます。洋風の家具は、函館の家具職人が東京の家具店を視察して制作したもので、暖炉には当時貴重だったイギリス製のヴィクトリアンタイルが使用されています。2階には、圧倒される広さの大広間があり、釣り天井のため視界を遮る柱がありません。漆喰の天井には美しい花々が彫られ、天井の縁には植物やリボンが木彫りで表現されるなど、細部に至るまで一切の妥協なく、職人の技と美意識が注ぎ込まれているのが分かります。また、大広間とつながるバルコニーから一望できる函館港の開放的な景色は絶景です。

旧函館区公会堂の周辺には、「カトリック元町教会」「函館ハリストス正教会」「函館聖ヨハネ教会」といった教会群も点在しており、異国の地で信仰や暮らしを大切に守り続けてきた、当時の人々の想いの跡が今も色濃く残っています。

元町エリアは魅力的な観光地であると同時に、学校などの公共施設もある住宅街です。長い時間をかけて守られてきた街並みと、市民の穏やかな日常を壊さないためにも、訪れる私たち一人ひとりが節度を持ち、この街と向き合いたいものですね。この冬は、異国情緒あふれる函館へ街の歴史を感じる旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

旧函館区公会堂
https://maps.app.goo.gl/GV7X1qTPdxEgzJJ1A
小樽ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/otaru.html

参考資料
https://hakodate-kokaido.jp/2021/04/20/history/
https://www.hkd.mlit.go.jp/hk/tikkou/m8lgt80000000bz3.html
https://www.hakobura.jp/features/98