2025年03月

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【桃の節句】

七十二候では桃の節句のころ、3月10日〜14日ごろを「桃始笑(ももはじめてさく)」と呼び、桃の花が咲き始める時期とされています。

七十二候とは、一年を七十二に分け、気象の変化や動植物の様子を表現した言葉で、季節の移り変わりを細やかに伝えるものです。一方、二十四節気は、一年を二十四に分け、春夏秋冬それぞれを六つに区切ったもの。どちらも、太陽の動きや日照時間の変化に基づき、自然の営みを反映したものです。

花が咲くことを「ほころぶ」とも表現します。「ほころぶ」とは、内に秘められていたものが外に現れることを意味し、溜めていた力が一気に解き放たれる瞬間でもあります。花が咲くことも、鳥がさえずる瞬間もまた、ほころびの一つです。春がほころび、山は笑います。そして人もまた、心の奥から湧き出た喜びが隠しきれなくなったとき、自然と顔に笑みがこぼれるのです。

桃は中国において不老長生の象徴とされてきました。古典小説『西遊記』には、孫悟空が食べた不老不死の桃「蟠桃(ばんとう)」が登場します。この桃は扁平な形をしており、「座禅桃」とも呼ばれるそうです。日本でも、桃には邪気を祓う力があるとされ、『桃太郎』の昔話の由来にもなったといわれています。ニューヨークで蟠桃を食べたことがありますが、英語では「ドーナツピーチ」と呼ばれています。

かつて中国では、厳しい冬を越え、桃の花が咲く旧暦三月に結婚式を挙げる風習がありました。若き娘たちの門出を祝うとき、いつも桃の花が咲いていたのでしょう。こうして桃の花は、幸福をもたらす象徴とされ、気立てのよい娘を表すものともなりました。この風習が上巳の行事と結びつき、日本では「桃の節句」として広まり、女の子の健やかな成長と幸せを願う行事へと受け継がれています。

春は、心までほがらかにしてくれますね。最近入荷したHASAMIの新色「ピーチ」は、ほんのりとやさしい桃色です。春の訪れを楽しむひとつの彩りとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。

HASAMI ピーチカラー
https://www.shokunin.com/jp/hasami/

参考資料
https://www.543life.com/content/seasons24/post20220310.html
https://www.lunaworks.jp/column/1110
https://weathernews.jp/s/topics/201802/270065/
https://kobe-kaikyopark.jp/24s74k
https://www.kudamononavi.com/zukan/peach/bantou
https://ja.wikipedia.org/wiki/バントウ

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【奈良の志賀直哉旧居】

奈良に行くとたびたび訪れているお気に入りの場所の一つに、近代日本文学を代表する小説家、志賀直哉の旧居があります。にぎやかな駅の周辺から、猿沢池、ならまちを抜け、奈良ホテルを過ぎ、高畑という歴史ある住宅街のほうへ。近鉄奈良駅から徒歩25分ほど。バスでも近くまで行くことができますが、たいていは散歩を楽しみながらぶらぶらと歩いて行きます。

1883年(明治16年)、宮城県石巻に生まれた志賀直哉は、2歳の時に実業家だった父・志賀直温と共に東京に移り、祖父母に育てられます。学習院中・高等科を経て1906年7月、東京帝国大学英文学科に入学。夏目漱石による講義以外はほとんど関心を持たなかったという志賀ですが、この時期に数多くの文学作品に触れ、在学中から執筆活動を開始しました。1910年には、武者小路実篤や、複数の同人誌のメンバーらと共に雑誌『白樺』を刊行。その中には、後年民藝運動を起こす柳宗悦もいました。『白樺』は、のちに「白樺派」と呼ばれる理想主義・人道主義・個人主義的な文芸思潮を生み、明治政府が国を挙げて推し進めてきた官製的な芸術観念を打ち破る、新たな流れとなっていきます。

志賀直哉は生涯のうちに何度も居を移しており、その全貌はとても書ききれないのですが、彼が関西にやって来たのは1923年(大正12年)のこと。最初は京都に、1925年には奈良へと移り住み、その後1929年に自ら設計して建てさせたのが、この「志賀直哉旧居」です。数寄屋建築でありながら、随所に洋風も取り入れた美しい邸宅で、入ってすぐの階段を上ると若草山や三笠山を間近に望むことができる和室が。吹き抜ける風の心地よさについ時間の経つのを忘れてしまいます。1階には静けさと陰影の漂う北向きの書斎のほか、茶道を習っていた夫人や娘たちのための茶室もあります。広々とした食堂の前のサンルームは、庭に面した大きな窓と天井から光が差し込み、いかにも居心地がよさそうです。志賀直哉を慕う多くの文化人が引きも切らず訪れていたというこの家は、いつのころからか「高畑サロン」と呼ばれるようになりました。武者小路実篤、瀧井孝作、小林多喜二、小林秀雄、関東大震災で焼け出され京都に移住した柳宗悦、のちに第206世東大寺別当(住職)となる上司海雲、梅原龍三郎など、綺羅星の如き人々がこの場所に集って芸術を論じ、また娯楽に興じました。

延べ13年に及ぶ奈良での暮らしは1938年(昭和13年)、一家が東京に帰ることになったために幕を閉じますが、その当時の思いを志賀直哉は次のように記しています。「妻子五人ゐる自分の家にゐながら、二三日すると、矢も盾も堪らず、奈良に帰りたくなるのは不思議な位だ。」「兎に角、奈良は美しい所だ。自然が美しく、残っている建築も美しい。そして二つが互に溶けあってゐる点は他に比を見ないといって差支へない。今の奈良は昔の都の一部分に過ぎないが、名画の残欠が美しいやうに美しい。」

ところで、志賀直哉旧居にはかつて、老朽化による解体の危機がありました。地域住民の方をはじめとする多くの方々の尽力により保存が決まり、1978年に学校法人奈良学園が購入、大規模な修理と復元を行って一般公開を続けてくださっていることを、深い感謝と共に付け加えておきたいと思います。

志賀直哉旧居の周辺には新薬師寺や入江泰吉記念奈良市写真美術館、白毫寺など、まだまだ見どころがたくさんあるので、ぜひ足を伸ばしてみてください。

奈良学園セミナーハウス 志賀直哉旧居
https://www.naragakuen.jp/sgnoy/
ショールームのご案内
https://www.shokunin.com/jp/showroom/

参考資料
『志賀直哉旧居の復元』(呉谷充利 編、学校法人奈良学園、2009年)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%97%E8%B3%80%E7%9B%B4%E5%93%89
https://www.daiwahouse.co.jp/tryie/and/vol104/sp.html

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【料理のオノマトペ】

「ぐつぐつ」と煮込む音までごちそうの鍋焼きうどん。「シャキシャキ」おいしい大根サラダ。「くたくた」になるまでじっくり煮込んだ野菜。「つるん」と「トロトロ」とろける茶碗蒸し。台所や食卓では毎日いろいろな音とそれを表す言葉にあふれ、意識して耳で拾ってみると、改めて日本語における表現の面白さと豊かさを感じます。

聞くところによると、日本語はこのような音や感覚、状態を表現する擬音語や擬態語である「オノマトペ」が豊富な、世界的にも珍しい言語だそうです。特に食材の食感を表現するオノマトペは諸外国と比べて多く、食感の微妙な違いをオノマトペで厳密に使い分けているといいます。

子供のころから聴き慣れているので、「ツルツル」はなめらかで滑るような状態、「ピリピリ」ならスパイシーな辛さ、「ぐつぐつ」なら強火を、「ことこと」や「くつくつ」なら弱火を直感的にイメージすることができますね。音と動きが結びつくと感覚や記憶が刺激され、その場にいるような臨場感が一層強まります。料理においてオノマトペは、調理の様子や食材の状態を言葉だけで具体的にイメージさせる力を持っています。

そんなわけで、オノマトペを意識しながら料理をしてみると、耳から入る音をオノマトペとして表現する日本語の面白さを再認識する良い機会になりました。「ぐつぐつ」「ジュージュー」の音に耳を喜ばせ、「ほくほく」や「トロトロ」の食感を味わう。いつもの台所や調理器具から、どんな音が聞こえてくるか、食べ慣れた食材の食感はどんな言葉で表現できるか、オノマトペを通して五感で料理を感じてみると、食べる時間もより豊かで楽しいものになるのではないでしょうか。

松山陶工場 土灰斑点土鍋 小
https://www.shokunin.com/jp/matsuyama/donabe.html
白木屋漆器店 手塩皿
https://www.shokunin.com/jp/shirokiya/teshio.html
青龍窯 蕎麦猪口
https://www.shokunin.com/jp/seiryu/soba.html
大寺幸八郎商店 かなまり 中
https://www.shokunin.com/jp/otera/kanamari.html

参考資料
https://toptrading.co.jp/pages/42/detail%3D1/b_id%3D852/r_id%3D45/
https://design.houtyou.com/cooking-design/dish-name/
https://www.pop-school.com/blog2/staff-blog/5753/
https://news.cookpad.com/articles/8144