2024年06月

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【陶器の町、グスタフスベリ】

スウェーデンの首都ストックホルムからバスで約30分の郊外にある、陶器の町「グスタフスベリ」。リサ・ラーソンの作品集を読んでこの場所を知り、数年前に一人その地を訪れました。

ファルスタ湾に面した小さな港町グスタフスベリは、1640年に設立されたレンガ工場が1825年に陶器メーカーとして生まれ変わってから、陶工場を中心に発展してきました。1917年にディレクターとして迎えられた「北欧工芸界の父」と称されるヴィルヘルム・コーゲが、スウェーデンの古典的な意匠に機能性を盛り込んだテーブルウェアを製作し、グスタフスベリの名を世界的なものに押し上げます。1942年にはコーゲのアシスタントを努めていたスティグ・リンドベリと共にグスタフスベリ・スタジオを設立。数多くのアーティストを擁し、その高い芸術性で1950~70年代にかけて一時代を築きました。

日本でも、スティグ・リンドベリの代表作である「ベルサ」という葉っぱが描かれた器や、リサ・ラーソンの丸みを帯びた少しシュールでかわいらしい動物の置物を見たことがある方がいらっしゃるかもしれません。リサ・ラーソンは、ヨーテボリ大学芸術学部デザイン工芸大学で陶芸を学んだのち、スティグ・リンドベリに見出され、グスタフスベリ製陶工場に入社します。以来、26年間にわたりデザイナーとして活躍し、スウェーデンを代表する陶芸デザイナーとして一躍人気を集めました。

バスに揺られグスタフスベリに到着すると、まず赤レンガの三角のギザギザ屋根の建物が目に飛び込んできます。昔は工房だったこの建物は、「グスタフスベリ・アウトレット」。小さな入口の扉を開けると、自然光に照らされたスティグ・リンドベリの器がずらりと奥の方まで並んでいて圧巻です。アウトレット品ということもあり、日本で買うよりはお手頃な価格でグスタフスベリの器を購入することができます。

その後訪れたのは、歩いてすぐのところにある「グスタフベリ陶磁器博物館」。もともとグスタフスベリ社の工場だった建物が、博物館として再利用されています。製作過程や、グスタフスベリが創設された1825年からの名作食器にアート作品が年代順に展示されており、展示の見応えはもちろん、明かりや雰囲気が心地よく、ゆっくりじっくりと見て回りました。私が訪れた時はちょうどリサ・ラーソン展をやっていて、グスタフスベリの地で見る彼女の実物の作品にはこれまで見たことがないほど大きなものもあり、一際パワーを感じました。周辺にはイッタラアウトレットなど陶磁器関連のショップや施設が集中しているので、歩いて巡ることができます。

今もなお、世界中で愛されるミッドセンチュリーの北欧食器が生み出されていた場所、グスタフスベリ。実際にその地に足を運び、博物館やショップで実物を見て、感じて、学ぶことができたことは本当に貴重な経験でした。しかし、一番記憶に残っているのは、静かなグスタフスベリを歩き、顔を上げた時にふと目にした、きらきらと輝く緑とヨットハーバーの水面。その何気ない瞬間の中に、この場所で作られたらそりゃいいものができるでしょう、と感じずにはいられないような、眩しさ、美しさが詰まっていました。日本でグスタフスベリの器に触れた際は、その生まれた場所であるスウェーデンの小さな港町にも、想いを馳せてみてください。

グスタフスベリ
https://gustavsberg.jp/
グスタフスベリ陶磁器博物館
https://maps.app.goo.gl/ZuCMZAejJVZAaDi88
グスタフスベリ・アウトレット(Gustavsbergs Porslinsfabrik)
https://maps.app.goo.gl/fPoCXC3aAfqCmcZ28
リサ・ラーソン
https://lisalarson.jp/

参考資料
木寺 紀雄(写真)『リサラーソン作品集 -作ることは、生きること。-』パイインターナショナル(2011)
https://tonkachi.co.jp/artist/lisa-larson/
http://letsgo-sweden.com/gustavsbergs-porslinsmuseum/
https://www.lisalarson.jp/lineup/keramikstudion.php