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【はじめちょろちょろなかぱっぱ】

いつ覚えたのか、誰から教わったのか分からないけれど、すらすらと言える呪文のような言葉。「はじめちょろちょろなかぱっぱ、あかごないてもふたとるな」。江戸時代から伝わるご飯の炊き方の秘訣を、リズムに乗せた言葉です。

地域により伝わり方は多少異なるようですが、「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、ぶつぶつ言うころ火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふたとるな」という全文があり、羽釜でご飯を炊くことと連動したこの言葉には、工程だけではなくおいしくなる理由も隠されていて、現代の炊飯にも生かされています。

昔の家にはかまどがあり、金属でできた羽釜の羽をかまどの穴にかけ、薪を焚べて火加減を調整しながらご飯を炊いていました。「はじめちょろちょろ」は、炊き始めは火力が安定せず火が弱く、火の様子を見ながら薪を足す工程で、そのじわじわと温度が上がっていく間にお米が水分を吸い、じっくりと甘みを引き出します。

火が安定してきたら、「なかぱっぱ」。強火で吹きこぼれるほど沸騰させることで、米が対流し均一に加熱されます。「ぶつぶつ言うころ火を引いて」は、沸騰を保ちながらも薪を減らし火加減を少し弱めます。釜の保温性により、ここでしっかりと火が通り、米の甘みとうまみが増します。「ひと握りのわら燃やし」は、再び少しの間強火にし、余分な水分を飛ばします。すると、ハリを残したふっくらとした米粒になります。

最後に、「赤子泣いてもふたとるな」。釜の中の水分を飛ばして火を止めたら、しっかりと蒸らしお米にうまみを閉じ込めます。おいしいご飯になる重要なポイントのため、小さな子がお腹を空かせて泣いても、蓋を取りたい気持ちをぐっとこらえ、蒸らすことを表しています。現代では、かまどを使う機会は少ないですが、直火でご飯を炊く場合にもこのリズムを覚えておくと良さそうです。「はじめちょろちょろ」の部分だけ、弱火から徐々に温めたほうが良い鍋や、最初から強火にかけられる鍋など、それぞれの鍋の個性に合わせた方法をおすすめします。

そして、羽釜と木蓋もご飯炊きに深い関係がありました。羽釜の適度な深さと丸みのある底の形は、大きな対流を生みやすく、米粒が踊るように動きます。釜の羽は、かまどに引っ掛けるためだけではなく、吹きこぼれた水分を羽が受け、鍋肌を伝い火を消さないため、火加減を保てます。木蓋のように厚みのある蓋は、湯気を吸って重くなることでしっかりと密閉し、圧力をかけながら炊くことができますし、木製のため、適度に蒸気を逃すこともできるので、炊き上がったご飯に水滴も落ちません。

スズ木の羽釜ごはん鍋は、昔ながらの羽釜の特長を生かした土鍋釜です。萬古焼の陶土を使った土鍋ならではの耐熱性・蓄熱性・保温性で、強火でもゆっくりと火を通し、遠赤外線効果でご飯がふっくらツヤツヤになります。ショールームでは、木蓋が一際目を引き、土鍋らしい丸くてあたたかみのあるかわいらしい形と、白いご飯が映える鍋の黒色も存在感があり、多くのお客様にご覧いただいています。お米が貴重な今だからこそ、一食のご飯を大切に炊いてみてはいかがでしょうか。

スズ木 羽釜ごはん鍋
https://www.shokunin.com/jp/suzuki/
若松ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/wakamatsu.html

参考資料
https://panasonic.jp/life/food/110021.html

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【旧日本郵船株式会社小樽支店】

先日、長年にわたる保存修理工事を終え、一般公開が再開された旧日本郵船株式会社小樽支店へ行ってきました。建物の前に立った瞬間、目の前に広がる石造りの外観に思わず見入ってしまい、時代を超えて明治の空気に包まれたような、不思議な感動が胸に広がりました。

この建物は1906年(明治39年)に完成し、当時の日本が近代国家として歩みを進める中で、海運業の発展とともに築かれた象徴的な存在です。設計を手がけたのは、工部大学校の第一期生であり、辰野金吾と並ぶ明治建築の先駆者・佐立七次郎。彼の設計によるこの建物は、近世ヨーロッパの復興様式を取り入れたデザインが特徴で、特に正面玄関のポルチコ(柱廊)は堂々とした風格を漂わせています。外壁には堅牢な石材が使われており、建物全体からは当時の技術力と美意識の高さが伝わってきました。

中に入ると、1階の営業室には飴色に輝く木材がふんだんに用いられ、柱や梁の細部にまで職人の繊細な技が感じられます。市内に残る銀行建築に見られる、点検のための出入り口「人孔」もあり、当時の建築様式との共通点に気付かされました。2階に上がると、貴賓室と会議室では、壁紙に使われている「金唐革紙(きんからかわかみ)」の美しさに目を奪われました。これは日本独自の装飾紙で、金箔や型押しによる豪華な意匠が特徴です。和紙にスズなどの金属箔を貼り、版木に打ち込んで立体的な模様を浮き出させたあと、彩色などを施していて、光の加減で表情を変えるその質感は、まさに迎賓空間にふさわしい格式を備えており、建築と装飾が一体となった空間美を堪能でき、迎賓空間としての格式の高さが伝わってきます。

また、2階の廊下の窓から外を眺めた時、景色がほんの少し歪んで見えたのが心に残りました。これは、当時の手吹きガラスを筒状にして切り開き、板ガラスとして使用していたためで、表面にわずかな気泡や凹凸が残っているそうです。さらに驚いたのは、この建物が単なる商業施設ではなく、歴史的にも重要な役割を果たしていたという点です。1906年11月には、ここで「樺太国境画定会議」が開かれました。これは日露戦争後、ポーツマス条約に基づいて南樺太の国境を確定するための外交会議で、日本とロシアの代表団が2階の会議室で交渉を行いました。隣接する貴賓室では祝杯も交わされたと伝えられており、この場所がまさしく国際政治の舞台であったことがうかがえます。

このような歴史的背景を持つ建物が、戦後も大切に守られ、1980年代、そして2020年から2025年にかけての大規模な修復を経て、今もなお当時の姿をとどめていることに深い感動を覚えました。耐震補強や外壁・内装の修復も丁寧に行われ、竣工当初の姿が忠実に再現されている点からも、文化財としての価値の高さを改めて実感しました。

現在では小樽市が所有し、市立博物館の一部として一般公開されており、訪れる人々は明治の建築技術や美意識、そして小樽が「北海道の心臓」と呼ばれた時代の息吹を感じることができます。かつて小樽が物流と外交の要として栄えた歴史を、この建物を通じて肌で感じることができ、とても貴重な体験となりました。

歴史、建築、文化、そして外交が交差する旧日本郵船株式会社小樽支店。単なる観光地ではなく、日本の近代史を深く知るための「生きた資料館」として、これからも多くの方に訪れていただきたいと心から思います。

旧日本郵船株式会社小樽支店
https://kyu-nippon-yusen-otaru.jp/
小樽ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/otaru.html

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【銀座散歩 豊岩稲荷神社】

稲荷神を祀る、稲荷神社。神仏分離の際には神道系と仏教系に分かれ、神道における総本宮は京都市にある伏見稲荷大社とされています。稲荷神社は全国に約3万社あるといわれており、その数は日本の神社の中でも最多です。建物が隙間なく並んでいる東京は銀座の街にも、小さな神社がところどころに造られています。

その一つ、豊岩稲荷神社は江戸初期からこの地に火防神・縁結神として信仰を集め、地元の方々の手で守られてきました。先人の言い伝えによれば、明智光秀の家臣である安田作兵衛により祀られ、大正から昭和戦前には当時活躍した歌舞伎役者の市村羽左衛門をはじめ、多くの芸能関係者が参詣に訪れたことでも知られました。今でも近隣の方々が日々参拝する姿が見られる由緒正しい神社です。近年、縁結びのご利益があるパワースポットとしての呼び声も高くなりました。限りはありますが、御朱印や御守りも授与していただけるそうです。

銀座7丁目のすずらん通りを歩いていると、ビルの狭間で見過ごしてしまいそうなところ、朱色ののぼりが豊岩神社を知らせてくれます。1994年のビル建設により縮小され、現在の形となったそうです。細い裏路地の奥へ進むと、暗がりの中に灯籠が見え、その奥に社殿が姿を現し、2体の狐の像と共に迎えてくれます。銀座の街なかとは思えない、とても静かな空間です。お参りをしていると時折風が通り、灯籠に下げられた風鈴の音が耳に心地よく、涼を運んできてくれました。

そして当店は銀座1丁目、歴史ある奥野ビルの一室にショールームを設けております。銀座散歩へお出かけの際はぜひお立ち寄りください。205号室で皆さまのお越しをお待ちしております。

大寺幸八郎商店 風鈴
https://www.shokunin.com/jp/otera/furin.html
TOUCH CLASSIC 風鈴
https://www.shokunin.com/jp/touchclassic/furin.html
能作 風鈴
https://www.shokunin.com/jp/nousaku/furin.html
銀座ショールーム
https://www.shokunin.com/jp/showroom/ginza.html

参考資料
https://www.ginza-web.com/detail/43/index.html
https://www.ginza.jp/visit-shrines/27210
https://co-trip.jp/article/588276
https://inari.jp/about/faq/
https://jyunen.jp/shrine/%E8%B1%8A%E5%B2%A9%E7%A8%B2%E8%8D%B7%E7%A5%9E%E7%A4%BE/